抄録
美術教育を専門的に受けていない学生(非専門的学習者)と専門的に受けている学生(専門的学習者)を対象に,単色彩の水墨画を題材として,鑑賞者の視線をアイトラッカーで分析した.視線対象は,①墨で濃く描かれている部分,②薄く描かれている部分,③何も描かれていない部分とし,対象箇所への視線停留回数と視線1 回当たりの停留時間を測定した.その結果,②墨で薄く描かれている部分において,解説の有無により専門的学習者と非専門的学習者間の視線の違いが顕著にみられた.解説文を呈示することで専門的学習者と非専門的学習者の視線の停留回数が有意に増加し,その増加は専門的学習者において,有意に大きかった.また専門的学習者は解説を読む前では,非専門的学習者よりも有意に長く視線を停留させ,解説によって視線停留時間を有意に低下させたことが明らかになった.