2022 年 35 巻 1 号 p. 45-50
TURBTは泌尿器科医にとって必須な手技であり, その良し悪しが患者の予後を規定するといっても過言ではない. 加えて, TURBTは個体差によるバリエーションに富んでおり, 初心者のみならず熟練者であってもその難しさを痛感する手術である. そのため, それぞれの症例に応じた戦略 (根治的・姑息的・診断的切除の判断, 切除の手順・方法等) をたてることが重要であり, 加えて合併症対策をしっかりと行うこと, システム化された指導法を確立することが重要である. 今回, 初心に立ち返り当院における『合併症を回避するためのポイント』を整理した. 術中合併症には穿孔や出血が挙げられる. 高齢者, 複数回のTUR歴やBCG治療歴などによる膀胱壁菲薄化が術中穿孔リスクとなる. 出血は, 術中の不十分な止血操作だけでなく, 抗血小板薬・抗凝固薬の内服もリスクとなる. これらの薬剤継続による出血のみならず, 休薬に伴う血栓症リスクを術前に評価することも重要である. 術後合併症には前立腺肥大症などによる尿道カテーテル抜去後尿閉による穿孔がある. これらの合併症対策として, 1. 術前に画像検査で筋層浸潤の有無を判断し, 症例に応じた戦略作成をたてること, 2. 抗血小板・抗凝固薬の継続, 中止の取り扱いを検討すること, 3. システム化された指導を行うこと, が重要である. これらのポイントについて, 当科で実践している手技, 術前戦略が功を奏した症例などを提示しながら解説する.