1998年, Gillingの開発したHoLEP (Holmium laser enucleation of the prostate) は前立腺肥大症 (Benign prostatic hyperplasia ; BPH) の内視鏡治療に改革をもたらした. 一方で, その普及とともに技術の習得に時間がかかる事, 術後早期の一過性の尿失禁 (Urinary incontinence ; UI) の発生頻度が高いことが問題点としてあげられるようになった. Gilling自身は一過性のUIを問題としておらず, 時間とともに改善するとして具体的な対策を行ってはいなかった.
日本ではGillingの指導を受けることが出来なかったため, 原法とは異なる剥離中心の解剖に沿った術式が進化を遂げ, 世界の中でHoLEPが最も普及した国となった. しかしながらUIに関する報告は欧米と大差がない印象がある.
HoLEPが普及し始めた当初は, 12時方向の処理が原因でUIが起こると考えられ, この克服を目指し, ある程度対策がなされその効果があると感じていた. しかしHoLEPのさらなる普及とともに, UIがあることも徐々に容認されてしまったのではないかと危惧している. その後も機器の進歩や術式の効率化ばかりに目が向けられ, 術者の視点では技術が向上していると感じられているが, UIについては客観的に見て, 特に患者の視点からは向上しているとは言い難い. 一方で, 術後早期よりUIのない核出をしている術者のもとで, 継続した指導を受けた若手の日本人医師にとっては, HoLEPはUIの多い手術との認識はない. 海外に目を向ければ, その報告では術後のUIを3カ月で評価することが多い. 6カ月で評価しているものさえあり, 一過性のUIの解釈については依然として解決されていない印象がある. UIについてこれらの報告を基準にすることは技術の進歩に繋がるとは考えにくい.
HoLEP術後のUIは克服すべき問題点であるが, その原因や対策についてまとまって検討されることはなくなりつつある. 一過性でもあり, ある程度容認されてしまったことでその原因や対策の具体的な方法が十分に共有されていないことも原因であろうと考える. しかし, HoLEPが日本で普及してから10年以上が経過し, BPHの内視鏡手術の中で核出術がその有用性を高めている今こそ, 本特集を通じてUIのない術者の手術手技を学び, UIの原因や有効な対策につき情報を共有し, あらためて術後UIの軽減につき考え行動する一助になれば幸いである.
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