Japanese Journal of Endourology and Robotics
Online ISSN : 2436-875X
35 巻, 1 号
選択された号の論文の32件中1~32を表示しています
特集1 : VURに対する注入療法の現況
  • 浅沼 宏, 宮北 英司
    2022 年 35 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     第34回泌尿器内視鏡学会シンポジウム15で那須保友会長のご配慮により「VURに対する注入療法の現況」を企画していただいた. 内視鏡的注入膀胱尿管逆流防止術は, 単純かつ簡便である手技のためday care surgeryとして広く施行されている. しかし, 治療成績が従来の手術の比べ劣ることが問題とされている. 本手技は単純かつ簡便であるが, 繊細な技術を要するためlearning curveが存在し, 様々な成績が報告されている. 今回, 1. 内視鏡的膀胱尿管逆流防止術の原理と基本手技 (宮北英司 ; 東海大学医学部付属大磯病院泌尿器科), 2. 私の注入療法, このように行っている. その工夫. (徳永正俊先生 ; 東海大学医学部付属大磯病院泌尿器科) 主に成績向上のためのコツと難治例に対する対処を発表していただいた. 3. 私の注入療法, このように行っている. その工夫 (丸山哲史先生 ; 名古屋市立東部医療センター泌尿器科) 主にAYA世代ないし成人例に対する本手技の工夫を発表していただいた. 4. 私 (当施設) の注入療法, このように行っている. その工夫. (西盛宏先生 ; 神奈川県立こども医療センター泌尿器科) 本手技の穿刺, 注入の工夫と副作用について発表していただいた. 5. 続発性膀胱尿管逆流に対しての内視鏡注入療法, このように行っている. (佐藤裕之先生 ; 都立小児総合医療センター泌尿器科・臓器移植科) 注入療法の成績が必ずしも高くない続発性VURに対する本方法を行う治療戦略を発表していただいた. 6. 続発性膀胱尿管逆流に対するDx/HA内視鏡的注入療法. (東武昇平先生 ; 佐賀大学医学部泌尿器科) 続発性膀胱尿管逆流に対する成績及びその限界と他治療への移行についての意見を発表していただいた.

     本治療法はminimal invasive surgeryとして誰もが認める治療法であるが, 本シンポジウムの議論を基にその成績向上に向けての工夫を凝らすことによってその治療成績が改善し, 多くの患者さんが恩恵を被ることできることを願います.

  • 宮北 英司
    2022 年 35 巻 1 号 p. 2-5
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     内視鏡的膀胱尿管逆流防止術 (内視鏡的注入治療) は単純かつ簡便であるためにday care surgeryとして有用であるため欧米を中心に広く施行されている. 本手技の逆流防止の原理は, 尿管口に腫瘤を形成することによって, 尿管口部の後壁の補強, 弁形成および壁内尿管部の延長である. すなわち, 排尿時ないし膀胱充満時に膀胱内圧上昇に対して弁作用が改善されることである. 手技は, 砕石位をとり, 膀胱鏡を挿入し, 尿管口の6時の位置から針を刺入し, 尿管口に腫瘤を形成する. 本手技の逆流防止の原理は腫瘤形成により後壁の補強, 膀胱壁内尿管の延長と弁形成を目的としている.

  • 徳永 正俊, 宮北 英司
    2022 年 35 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     膀胱尿管逆流 (VUR) に対する注入療法は, 膀胱鏡を用いて尿管口の粘膜下にペーストを注入することにより逆流を防止する手技である. 低侵襲かつ簡便な手技で広く施行されているが, 開放手術に比べ逆流消失率が低いことが最大の問題である. 我々は, これまでに小児原発性VUR 205例に対し本術式を施行しており, その経験を踏まえ, 本稿では, 本術式の適応, 治療成績を簡単に述べた上で, 我々が行っている手技と成績向上のための工夫を報告する.

     また, complex症例として傍尿管口憩室を合併したVUR症例と膀胱尿管新吻合術後 (Paquin法) のVUR症例に対する手技の経験についても報告する.

  • 丸山 哲史, 西尾 英紀, 水野 健太郎, 林 祐太郎
    2022 年 35 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     膀胱尿管逆流 (VUR) に対する注入療法は, 根治率がやや低い状態にある. 一方, その低侵襲性は特筆すべき点で, AYA世代でVURと診断された女性に対しては内視鏡的注入療法を施行している. 小児とは体格も異なり, 用いる基材の選択や注入法に工夫が必要となる.

     成人であっても女性では小児用膀胱鏡を使用する. 成人では尿管口は開大しており, 容易に壁内尿管に内視鏡を挿入できることが多い. 有効な粘膜下トンネルができるだけ長くなるように, 壁内尿管の近位部位に基材を注入するようにしている (I-HIT法). 水圧拡張をしても内視鏡の挿入が困難な場合は, 尿管の遠位部のみに注入する. その際には視野確保のためにガイドワイヤーを留置しHIT法を施行している (G-HIT法).

     我々の施設での手術結果を報告する. 対象は12症例, 年齢は中央値32歳 (15-61歳), 全16尿管. 逆流程度はII度5尿管, III度8尿管, IV度3尿管であった. 術後に12尿管で逆流が消失, 初回逆流消失率は75%であった. III度及びI度VURが残存した症例は組織が堅く膨隆形成が不十分で, 再手術時に別の部位に追加注入をした. また, I度VURが残存していた症例はコラーゲン注入後で, 線維化のためか膨隆形成が不十分であった. 残りのI度VURが残存していた症例では, 尿管走行が屈曲しており適切な位置での注入が困難であった. 我々は, 尿管口の水圧拡張所見を穿刺方法選択の基準としているが, 尿管の走行・組織の硬さについては個々の症例に応じた判断が重要となる.

  • 西 盛宏, 郷原 絢子, 下木原 航太, 山崎 雄一郎
    2022 年 35 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     原発性膀胱尿管逆流症 (VUR) に対するデフラックス注入療法は本邦において2010年10月に保険収載され原発性VURの外科的治療の第一選択として推奨されている.

     当院では2011年3月より同治療を開始し, 現在まで48例73尿管に対して施行した. VUR grade別の治療成功率 (VURの消失, もしくはGr1以下への改善) はGrade IVが57%, grade IIIが75%, Grade IIが83%でありGrade Iに対しては全例VURの消失が得られ, これは既知の報告とほぼ同様の結果であった.

     当院でのデフラックス注入療法は現在日帰りを基本としてHIT+STING法でおこなっている. 初回治療不成功例もしくは経過中再発例の二次治療について, 開腹や気膀胱手術の観血的治療を選択する割合が高く, 注入時には特にデフラックスが膀胱外へ迷入しないよう注意している. そのため膨隆部と尿管の全体像が確認できるよう, また注入の際の針のブレを最小限となるよう, 針は尿管口から離れた部位に穿刺し, 粘膜下を長く通して注入するようにしている.

     当院での対象症例51例中1例 (1尿管) に術後10カ月で水腎水尿管を認め, デフラックスによる尿管狭窄が疑われた. 本症例は術前, また術後7カ月時までは水腎水尿管を認めず, 術後VCUGでVURの消失が得られた症例であった. 既知の報告ではデフラックス治療後の尿管狭窄は術直後から術後5年程度まで生じる可能性があり, さらに狭窄症状に乏しく発見時にはすでに腎機能障害を呈している症例が多いとされる. このことからデフラックス治療後はこまめな腎形態精査を長期にわたり継続する必要があると考えられる.

  • 佐藤 裕之
    2022 年 35 巻 1 号 p. 23-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     続発性VURおよびそれに準ずる病態に対する内視鏡的注入療法は注入方法にも工夫が必要であり, その成績は必ずしも高くない. 神経因性膀胱に伴うVURに対して56.7%-80%, 腎移植後のVURに対して36.8%-70.6%, 膀胱尿管新吻合術後VUR残存症例に対して66.7-80%の有効性が報告されているが, 短期的成績は良好であっても長期的には有効性が劣ることも報告されている. 注入療法を行う際に注入方法の技術的難易度・膀胱壁構造の変化が治療反応性を低下していることが示唆されており, まず最初に行うべき治療とはいいがたいが, 症例によっては有効な治療法の一つであり, 症例の適応を十分に検討したうえで, 必ずしも一期的ではなく計画的な治療戦略を立てながら, 下部尿路機能管理を行った上で治療を行うことでその有効性を上げられる可能性が示唆される.

  • 東武 昇平, 藏田 彩, 野口 満
    2022 年 35 巻 1 号 p. 26-28
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

    【背景】Dextranomer/Hyaluronic Acid (Dx/HA) を用いた内視鏡的注入療法 (以下注入療法) は膀胱尿管逆流症 (VUR) に対する外科的治療の一つである. 続発性VURに対するDx/HA注入療法に対する評価は定まったものとは言い難い. 【対象と方法】2013年1月-2016年12月に二分脊椎による続発性VURに対しDx/HA注入療法を7名の患者に実施した. 【結果】術前VURのグレードはⅡが1例, Ⅲが2例, Ⅳが4例であった. 術後3カ月時点での膀胱造影では2例でVURは消失していたが残りの5例はダウングレードに留まった. 【結語】続発性VURに対するDx/HA注入療法は一時的にVUR消失あるいはダウングレードが得られるが, 経時的に再増悪する症例が多く適応の見極めと厳重な経過観察を要する.

特集2 : 初心にかえって, TURBTの手技徹底検証!
  • 菊地 栄次, 西山 博之
    2022 年 35 巻 1 号 p. 29
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     TURBTは, 我々に広くなじんできた術式である. 特徴として, 1) 泌尿器科特有の手術様式であり, 2) 個人で完結できることから, 多くの施設において, 3) 泌尿器科手術の中ではトップクラスの手術件数を占める. 4) 若手泌尿器科医が早い段階で習得を求められる内視鏡手術の一つである一方で, 5) 症例毎の難易度にかなりの幅がある. 6) 指導指針が確立されていない, 7) 自己流での技術習得がなされ, 客観的な評価が困難であるという特徴も有している.

     本特集は, この日常的でありながらも甚深な術式であるTURBTを, 「初心にかえって, 徹底検証する」ために企画された. 早川望先生には, 独自に作成したTURBT評価票を用いた, レジデント教育の質の向上の可能性を示して頂いた. 自己評価のみならず他己評価を行うことの重要性が改めて認識された. 池田篤史先生には, 筑波大学付属病院泌尿器科と産業技術総合研究所人工知能研究センターの共同研究として進められている人工知能を利用した膀胱内視鏡検査支援システムについて紹介頂いた. AIを用いることで, TURBTの普遍的な質の向上が今後期待される. 西山慎吾先生には, 症例提示を交えながら, 合併症を回避するTURBTの極意を余すところなく解説頂いた. 安全なTURBTをとことん追求する努力を今後も維持していくという姿勢に賛同する. 最後に上平修先生より, TURBTの誕生, 機器・手技の改良の歴史, そして共焦点レーザー内視鏡や光コヒーレンス断層造影などを活用した診断技術向上への試みとその将来展望につき, 図を交え分かりやすく概説頂いた.

     「たかがTURBT, されどTURBT.」TURBTにおける技術向上・指導体制の在り方を, 熱く議論していくための参考に本特集がお役に立てればこれ幸いである.

  • 早川 望, 菊地 栄次
    2022 年 35 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     我々はTURBTの質向上を目的に, 独自に作成したTURBT評価票を用いてレジデント教育を試みた.

     2020年6月からの14カ月間に, 本院および分院において若手泌尿器科医 (レジデント) 3名が執刀した61例で評価票を用いた自己他己評価を行った. 評価医師5名は何れも泌尿器科10年目以上であった. TURを準備・粘膜生検・TUR・確認の4段階に大別した. 各段階に項目を作成しそれぞれ5段階で評価した.

     1-11症例目では, レジデント2は他2者と比較して自己評価が低い傾向にあり, 準備段階では4項目, 粘膜生検で4項目, TURで1項目の計9項目で3群間に有意差を認めた. レジデント2は14項目で1-11症例に比して12-25症例で自己評価が有意に上昇したが, レジデント3は有意差を認めなかった. 一方他己評価では, 1-11症例目においてレジデント2の評価が有意に低かったのは粘膜生検3項目であった. 1-11症例と12-25症例間では, レジデント2の評価に有意差は認めなかったが, レジデント3では準備段階1項目で12-25症例での評価が有意に低くなった.

     自己評価は, 自らを客観的に観察することを促し, 目標達成のために能動的に取り組む助けになると考える. また, 自己評価は評価医師のTURBTを手本とし, そこから相対的に自らのTURBTを評価するのに対して, 他己評価は想像上の成長曲線との相対評価で行うことが推察された. そのため, 自己に比して他己評価では点数がレジデントの経験数に依存しない傾向がみられた. 症例数は少ないが, レジデントは自己評価によってTURBTに臨む姿勢と技術習得の要点を学び, 評価医師は他己評価を通してレジデントのTURBTを真剣に視るようになり, いずれもTURBTの質の向上に貢献すると考えられた.

  • 池田 篤史, 野里 博和
    2022 年 35 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     筋層非浸潤性膀胱癌 (NMIBC) の標準治療である経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TUR-BT) は, 泌尿器科医にとって, 習得しなくてはならない必須の手術手技である. この手術の質の向上は, 術後の膀胱内再発の抑制に極めて重要であり, 平坦病変や微小な播種病巣 (娘腫瘍) の見落としを防ぎ, 腫瘍の水平方向および垂直方向の十分な切除につながる. 術中のスコープの操作による膀胱内全体の万遍ない観察, 尿混濁や血尿, 視野にとらえるのが困難な部位へのアプローチ, 良悪性の解釈が必要な粘膜発赤, これらの適切な検出と診断は, まさに経験の成せる業なのかもしれない.

     では, 大前提として, TUR-BT術前の評価は適切になされているだろうか?筆者が所属する筑波大学附属病院では, 術前カンファレンスで, レジデントが外来カルテをもとにプレゼン資料を作成している. 果たして外来担当医は, レジデントが資料を作成するのに堪える情報を記録しているだろうか?画像は何枚撮影している?所見を膀胱の展開図にわかりやすく描けているか?腫瘍の形状や大きさの記載は?

     本稿では, 膀胱内視鏡検査とTUR-BTの質の向上のため, 私たちが開発に取り組んでいる見逃しを防ぐ人工知能 (AI) を利用した膀胱内視鏡検査支援システムについて紹介し, 初心者・上級医を問わず抱えているTUR-BT術前, 術中の課題, 術後フォローアップについて考察したい.

  • 西村 慎吾, 小林 泰之, 定平 卓也, 岩田 健宏, 高本 篤, 佐古 智子, 枝村 康平, 和田 耕一郎, 荒木 元朗, 渡邉 豊彦, ...
    2022 年 35 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     TURBTは泌尿器科医にとって必須な手技であり, その良し悪しが患者の予後を規定するといっても過言ではない. 加えて, TURBTは個体差によるバリエーションに富んでおり, 初心者のみならず熟練者であってもその難しさを痛感する手術である. そのため, それぞれの症例に応じた戦略 (根治的・姑息的・診断的切除の判断, 切除の手順・方法等) をたてることが重要であり, 加えて合併症対策をしっかりと行うこと, システム化された指導法を確立することが重要である. 今回, 初心に立ち返り当院における『合併症を回避するためのポイント』を整理した. 術中合併症には穿孔や出血が挙げられる. 高齢者, 複数回のTUR歴やBCG治療歴などによる膀胱壁菲薄化が術中穿孔リスクとなる. 出血は, 術中の不十分な止血操作だけでなく, 抗血小板薬・抗凝固薬の内服もリスクとなる. これらの薬剤継続による出血のみならず, 休薬に伴う血栓症リスクを術前に評価することも重要である. 術後合併症には前立腺肥大症などによる尿道カテーテル抜去後尿閉による穿孔がある. これらの合併症対策として, 1. 術前に画像検査で筋層浸潤の有無を判断し, 症例に応じた戦略作成をたてること, 2. 抗血小板・抗凝固薬の継続, 中止の取り扱いを検討すること, 3. システム化された指導を行うこと, が重要である. これらのポイントについて, 当科で実践している手技, 術前戦略が功を奏した症例などを提示しながら解説する.

  • 上平 修
    2022 年 35 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     経尿道的膀胱腫瘍切除術 (transurethral resection of bladder tumor : TURBT) は膀胱腫瘍の確定診断および治療手段として標準的な手技となり, 若い泌尿器科医師にとって, はじめて行う内視鏡的な手術である可能性が高い.

     近年は軟性鏡, 生理食塩水を潅流液として用いるTUR in saline (TURis), セカンドTUR, 腫瘍のen bloc切除など治療技術の向上と共に光力学的診断法 (PDD) や狭帯域光観察法 (NBI) など診断技術の工夫が行われている.

     これらの技術は前時代の治療法, 診断法の欠点の補完や改善, 要求に応えるために開発されてきたのであり, その歴史や経緯を知ることは現在のTURの問題点や今後の方向性を決定する上でも役立つと考えられる.

     新しい技術が開発された論拠となる報告とその時代背景をおさえ将来の発展にむけて現在, 何が必要なのかを考えてゆきたい.

特集3 : HoLEP失禁のない核出術を実現しよう
  • 設楽 敏也, 永井 敦
    2022 年 35 巻 1 号 p. 60
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     1998年, Gillingの開発したHoLEP (Holmium laser enucleation of the prostate) は前立腺肥大症 (Benign prostatic hyperplasia ; BPH) の内視鏡治療に改革をもたらした. 一方で, その普及とともに技術の習得に時間がかかる事, 術後早期の一過性の尿失禁 (Urinary incontinence ; UI) の発生頻度が高いことが問題点としてあげられるようになった. Gilling自身は一過性のUIを問題としておらず, 時間とともに改善するとして具体的な対策を行ってはいなかった.

     日本ではGillingの指導を受けることが出来なかったため, 原法とは異なる剥離中心の解剖に沿った術式が進化を遂げ, 世界の中でHoLEPが最も普及した国となった. しかしながらUIに関する報告は欧米と大差がない印象がある.

     HoLEPが普及し始めた当初は, 12時方向の処理が原因でUIが起こると考えられ, この克服を目指し, ある程度対策がなされその効果があると感じていた. しかしHoLEPのさらなる普及とともに, UIがあることも徐々に容認されてしまったのではないかと危惧している. その後も機器の進歩や術式の効率化ばかりに目が向けられ, 術者の視点では技術が向上していると感じられているが, UIについては客観的に見て, 特に患者の視点からは向上しているとは言い難い. 一方で, 術後早期よりUIのない核出をしている術者のもとで, 継続した指導を受けた若手の日本人医師にとっては, HoLEPはUIの多い手術との認識はない. 海外に目を向ければ, その報告では術後のUIを3カ月で評価することが多い. 6カ月で評価しているものさえあり, 一過性のUIの解釈については依然として解決されていない印象がある. UIについてこれらの報告を基準にすることは技術の進歩に繋がるとは考えにくい.

     HoLEP術後のUIは克服すべき問題点であるが, その原因や対策についてまとまって検討されることはなくなりつつある. 一過性でもあり, ある程度容認されてしまったことでその原因や対策の具体的な方法が十分に共有されていないことも原因であろうと考える. しかし, HoLEPが日本で普及してから10年以上が経過し, BPHの内視鏡手術の中で核出術がその有用性を高めている今こそ, 本特集を通じてUIのない術者の手術手技を学び, UIの原因や有効な対策につき情報を共有し, あらためて術後UIの軽減につき考え行動する一助になれば幸いである.

  • 市川 孝治, 津島 知靖, 白石 裕雅, 和田里 章悟, 佐久間 貴文, 窪田 理沙, 久住 倫宏
    2022 年 35 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     これまで前立腺肥大症をはじめとした下部尿路閉塞 (bladder outlet obstruction : BOO) に対する経尿道的前立腺手術はTURP (Transurethral resection of the prostate) が主流であった. しかし本邦では2005年頃より急峻に核出術が普及し, 現在では核出術がTURPを凌駕する勢いである. その背景として, 出血が少ないこと, 灌流液に生食が使えること, 大きな腺腫に対しても施行可能なことが挙げられる. その反面, 手技が難しく, TURPと比べて術後尿失禁が多いとの報告もある. 本稿では, 前立腺のzonal anatomy, 前立腺腺腫の発生母地を理解し, 適切な核出を行うための注意点を外尿道括約筋の損傷をきたさないことに焦点をあてて解説した.

  • 遠藤 文康
    2022 年 35 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     前立腺肥大症手術におけるHoLEPは安全性の高い低侵襲治療であることが広く認められている確立した手術法であるが, 術式そのものの習得時間が長く, 術後の一過性腹圧性尿失禁 (transient stress urinary incontinence : tSUI) が多いとの印象もいまだに残っている. 本稿は第34回泌尿器内視鏡学会総会シンポジウムの「HoLEP : 失禁のない核出術を実現しよう」で議論された内容で, tSUIを引き起こす原因やそれを減らすための術式の工夫をまとめたものである.

特集4 : これから始めるTarget biopsy―Focal therapy
  • 浮村 理, 藤井 靖久
    2022 年 35 巻 1 号 p. 73
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     近年の前立腺MRIのmulti-parametric撮影技術の進歩に加えて, PI-RADSカテゴリーによるClinically significant cancerの存在可能性の定量的評価の標準化が進んでいる. すなわち, 即時治療が必要な前立腺癌病巣の可視化が, 一定の信頼度をもって可能となり, 可視化された癌疑い病変に対する標的化生検 (target biopsy) を実施すれば, 組織学的悪性度 (Gleason score) の治療前診断精度が向上し, さらに, 標的化生検により採取し得る癌組織の広がり (癌長) の情報と, 画像で可視化された癌病変の広がり (直径) との相関性も向上した. 従来の系統的採取を標準としていた前立腺針生検法では, サンプリングエラーにより, 麻酔を要し感染の危険もある検査が繰り返される, あるいは, 採取数を極端に増加させて実施される危険があったという欠点・課題の解決法として, 新たな方向性として, 針生検前にmulti-parametric-MRIを実施して, Clinically significant cancerの存在可能性を評価し, 従来の系統的生検 (systematic biopsy) と標的化生検 (target biopsy) との組み合わせを実施することが, 今後のあるべき姿となったと言っても過言ではない. Clinically significant cancerの局在が, 画像所見および組織学的に確認できると, 「可視化された即時治療が必要な限局性癌病巣が存在し, なおかつ, 他の部位には, 即時治療が必要な癌病巣が系統的生検で否定的な場合」には, その可視化されたClinically significant cancer (とその周辺) だけを標的化する新たな治療選択肢を, 科学的根拠に従って支持することに成った. 侵襲的な臓器全体を治療対象とする従来の侵襲的治療による有害事象を回避して, 低侵襲に癌病巣だけを治療することで, 臓器温存・機能温存を果たし, 「癌制御」と「機能温存」の両立を目標とする新たな前立腺癌治療の選択肢として, Focal Therapyが提唱され, その臨床的検証が進んでいる. 本稿では, 新しい前立腺針生検のあり方としてのTarget biopsyと, その診断に基づくFocal Therapyという新たな前立腺癌治療の選択肢の今を紹介し, これから始める読者にその方向性を示したい.

  • 秦 聡孝
    2022 年 35 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     近年のmulti-parametric MRIとMRI-targeted biopsyの発展によって, 従来より精度の高い効率的なclinically significant cancerの検出が可能になってきた. さらに, 簡便にMRI/US画像融合が可能なソフトウェアも開発・上市され, MRIを基軸とした前立腺癌診断ストラテジー普及の追い風となっている. 一方で, 過剰診断・治療への危惧やMRI診断におけるinter-reader variabilityの存在, 現行のMRI-targeted biopsyの問題点なども少なからず表出してきた. 本稿では, これまでのmulti-parametric MRIおよびMRI-targeted biopsyの発展や現状の課題について整理し, 今後の方向性について考えてみたい.

  • 小路 直, 高橋 薫平, 杠 総一郎, 鹿野 竜生, 花田 いずみ, 梅本 達哉, 小川 貴博, 中野 まゆら, 川上 正能, 新田 正広, ...
    2022 年 35 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     Multi-parametric magnetic resonance imaging (MRI) のsignificant cancer検出における有用性が明らかとなった. さらに, MRI-TRUS融合画像ガイド下生検などのMRIガイド下生検により, 高い精度で前立腺内部の癌局在診断が可能になったことで, 癌制御と機能温存を両立することを目的とした“Focal Therapy”が, 新たな治療戦略として注目されている. 高密度焦点式超音波療法 (HIFU) は, トランスデューサーから強力な超音波エネルギーを照射し, 小さな焦点領域にエネルギーを集束させ, 組織を破壊し, 治療効果を得る. われわれは, Focal Therapyの3本柱と考えられる正確な癌局在診断・標的治療・治療効果評価について, 基礎的, 臨床的研究に基づきプロトコールを作成し, HIFUによるFocal therapyを特定臨床研究として実施している. これまでの短期臨床成績は, 海外の臨床成績と比較して, 長期成績を期待させるものである. 今後, 治療機器としての有効性, Focal Therapyの臨床成績を適切に集積することにより, HIFUはFocal Therapyのモダリティーとして, 治療戦略の一翼を担うことが期待される.

  • 浮村 理, 藤原 敦子
    2022 年 35 巻 1 号 p. 86-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     限局性前立腺癌の治療には癌制御と生活の質 (QOL) 維持の両立が望まれる. 近年, 限局性前立腺癌に対するFocal Therapyは, 低侵襲でQOLが維持でき, oncological outcomeも良好であることが報告されている. 癌病巣のみを治療の対象とする癌病巣標的化治療のmodalityとしての凍結療法とマイクロ波熱凝固療法について概説する. 本治療の成功に重要なポイントは, 適切な患者選択である. MRIで可視でき, かつ超音波でも確認可能な病変は確実な穿刺がしやすい. また, 機能温存と合併症回避のためには, 尿道括約筋や神経血管束から離れた腫瘍がよい適応である. 凍結療法では前立腺の背側に位置する (直腸に接する) 腫瘍も治療適応があるが, マイクロ波では直腸に近接する病変は, 直腸損傷のリスクがあり現状では適応外である.

  • 松岡 陽, 戸田 一真, 吉村 亮一, 藤井 靖久
    2022 年 35 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     小線源を用いた前立腺全体への放射線組織内照射は限局性前立腺癌に対する標準的根治療法の一つであり, 国内では低線量率小線源療法が広く施行されている. 小線源療法は前立腺内を部分的に照射し, 治療域外の前立腺組織や周囲臓器への照射を削減あるいは回避することも可能であり, 近年, focal brachytherapyの施行が報告されている. 前立腺全体治療としての治療手技や評価法が確立しているためfocal therapyへの導入は比較的容易であり, 患者選択, 治療域計画, 治療後追跡が本治療を用いたfocal therapy成功のコツである.

     当施設では2010年より低線量率小線源療法を用いたfocal therapyを施行している. MRI, 系統的生検, 標的生検で評価を行い, 前立腺全体への小線源療法の適応を満たし, かつ, 病巣の広がりが部分的な低/中リスク癌を対象としている. 治療域計画では, MRIと生検に基づく病巣の広がりに応じた設定のほか, 区域単位での設定をとり入れている. 後者のうち, 片葉全体を治療域とする片葉療法は, 温存される対側葉がMRI陰性かつ生検で癌を検出されないことを条件として施行しており, 導入しやすい治療計画法である. 治療後追跡ではPSA, MRI, 排尿機能, 性機能の定期的評価を行っている. 小線源刺入後しばらくは組織が持続的な放射線効果を受けるため, 評価生検は治療2年後を目安に行っている.

     限局性前立腺癌への個別化治療であるfocal therapyにおいて, focal brachytherapyは今後の普及と発展に寄与することが期待され, 治療計画の要点と手技の工夫を中心に概説する.

尿路結石
  • 岡 利樹, 井之口 舜亮, 谷 優, 朝倉 寿久, 川村 憲彦, 中川 勝弘, 蔦原 宏一, 高尾 徹也, 山口 誓司
    2022 年 35 巻 1 号 p. 97-101
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

    【目的】当センターでの過去5年間の経尿道的尿管砕石術 (TUL) の治療成績について検討した.

    【対象と方法】2014年4月から2019年3月までに当センターでTULを施行した208例を対象とし, 完全砕石率や合併症発症率などを含め治療成績を検討した.

    【結果】年齢は33-90 (中央値 : 66) 歳で, 男性が104例で女性が104例, 患側は右 : 99例, 左 : 102例, 両側 : 7例であった. 部位はR2 : 49例, R3 : 21例, U1 : 75例, U2 : 22例, U3 : 60例 (重複あり) であった. 長径は3-54 (中央値 : 10) mm, 短径は2-20 (中央値 : 6) mm であった. 手術時間は10-207 (中央値 : 81) 分で完全砕石率は79%, 11%に術後有熱性尿路感染症を認めた.

    【結語】当センターでのTULの治療成績を報告した.

Endourology
  • 志賀 直樹
    2022 年 35 巻 1 号 p. 102-108
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     軟性尿管鏡は未だ破損しやすい. 当院では2015年9月から開封時と手術終了時の点検内容を手術記録に記載するよう義務付け, 破損時は管理者が原因調査し術者へのフィードバックと使用終了か継続条件を指定している. 今回2015年9月-2020年6月に使用終了となったカールストルツ社製の新世代ファイバースコープ23本698件において使用回数, 破損内容・原因を調査した. 使用回数は最多経験者専用機39.4回その他28.4回で, 終了に至った破損は被覆剥離12, レンズ曇り4, 黒点2, 湾曲部動作不良3, 同時に2種以上の損傷2だった. 滅菌・保管・搬送で4本が使用終了となった. 非熟練者では熟練者の3倍以上の破損頻度だった. 破損につながる条件や操作に対して逐次きめ細かく修正・指導を重ね, 軽微な破損に対しては事例を指定することで使用回数を延ばすことができた.

腹腔鏡手術 (副腎・上部尿路)
  • 小林 聡, 中楯 龍, 宮田 信一, 牟田口 淳, 李 賢, 門司 恵介, 柏木 英志, 武内 在雄, 塩田 真己, 猪口 淳一, 江藤 正 ...
    2022 年 35 巻 1 号 p. 109-118
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     ロボット支援腎部分切除術の術中超音波検査は, 腎腫瘍を確実に切除するために必須である. 術中超音波検査に用いられるL43Kプローブは, この術式に使用される超音波プローブの1つであり, 術中はフェネストレイテッド鉗子でプローブのフィンを把持して使用する. RAPNは狭い後腹膜腔で鉗子を使ってプローブを操作しなければならず, プローブ先端からフィンを把持することが頻回にあった. このフィンはプローブ先端に向かって傾斜が低くなりかつ放射状に広がっている構造のため, プローブ先端から把持できない設計になっている. これが原因でプローブ先端からの把持は安定せず, プローブを頻回に落としていた. 今回我々はプローブの先端から把持しづらい課題に対して, 医工連携を通してプローブアタッチメントを開発して解決したので報告する.

  • 山師 定, 山川 真季, 宗宮 快, 安宅 祐一朗, 喜多 秀仁, 中西 茂雄, 柳原 豊, 二宮 郁, 岡本 賢二郎, 菅 政治, 藤方 ...
    2022 年 35 巻 1 号 p. 119-125
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     愛媛県立中央病院では2003年8月から腹腔鏡下ドナー腎採取術を開始し2021年7月までの18年間に303例を経験した。東京女子医科大学方式に準じ, 後腹膜到達法で行いPfannenstiel創から摘出した。中心となる2名が, 初期は術者とカメラ助手をペアで行い, 手技が安定した後, 指導者になった。全症例の年齢は平均57.7歳 (25-86歳), 性差は男性 : 女性=127例 : 178例でやや女性が多く, 患側は右 : 左=56例 : 247例と著明に左側が多かった。手術時間の平均は228分 (95-405分), 出血量の平均は112 mL (0-1,520 mL), 温阻血時間の平均は5.9分 (3-12.5分) だった。時期, 性別, Body Mass Index (以下BMI), 患側, ポート数, 腎周囲脂肪の厚さなどの項目別に周術期成績を比較検討した。合併症は少なく安全に施行できており, これらの結果を継承し今後の発展に繋げていきたい。

腹腔鏡手術 (前立腺・その他)
ロボット手術
  • 錦見 俊徳, 山田 浩史, 水野 秀紀, 山内 裕士, 大橋 朋悦, 川喜田 睦司
    2022 年 35 巻 1 号 p. 133-142
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院におけるロボット支援下膀胱全摘除術 (RARC) +体腔内尿路変向術 (ICUD) の初期経験を報告する. ICUDを行っている施設は多くないが, 当院では, RARC初回症例から尿路変向術はICUDで開始した.

    【対象】当院でRARCを施行した14例のうち, 尿路変向術が尿管皮膚瘻となった1例を除く, ICUDで回腸導管造設術を施行した13例. 平均年齢 : 73.7歳. 男女比10 : 3.

    【結果】総手術時間中央値536分, コンソール時間中央値445分. コンソール時間のうち, 郭清-膀胱遊離時間中央値212分, 回腸導管造設時間中央値183分. 出血量中央値150 mL, 2例で輸血が必要. 合併症は, Clavien-Dindo分類にて麻痺性イレウス : 2例 (I, IIIa), 深部静脈血栓症 (DVT) : 1例 (II), 尿路感染症 : 4例 (全てII) を認めた.

    【結論】ICUDをRARC初回症例から導入可能であった. 一方で手術時間が長くなることや86歳の症例にDVTを認めており, 高齢者に対する適応は慎重に考慮すべき等, 今後の課題も挙げられた.

  • 嶋谷 公宏, 兼松 明弘, 松尾 勇樹, 田口 元博, 長澤 誠司, 山田 祐介, 呉 秀賢, 野島 道生, 山本 新吾
    2022 年 35 巻 1 号 p. 143-148
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     ロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術 (Robot Assisted Laparoscopic Pyeloplasty : RAPP) において臍付近にカメラポートをおく従来の方法は, 腎盂尿管移行部 (pelvic ureteral junction : PUJ) までの距離が近すぎることがあり, また上腹部にダビンチポートの痕が残る整容性の問題がある. Hidden Incision Endoscopic Surgery (HIDES) 法は臍ポート以外の全てのポートをビキニラインより下に配置する方法で, 導入の経験を報告する. 当科でのRAPP11例のうち従来法を7例, HIDES法を4例で行った. 所要時間は従来法と有意差を認めなかった (HIDES vs 従来法 中央値 : 腎盂形成 236分 vs 214分, コンソール 137分 vs 150分, 腎盂縫合 65分 vs 67分). 術後の再狭窄例は認めていない. HIDES法はPUJが低い症例でポート距離を適切に取ることができ, 小児でも広い視野での手術が可能で, 整容性に優れている. 小児やPUJの位置が低い成人に適した方法である.

  • 小澤 佑, 小津 兆一郎, 小池 慎, 青木 啓介, 松尾 智誠, 横井 那哉, 中村 憲, 服部 盛也, 西山 徹, 矢木 康人, 門間 ...
    2022 年 35 巻 1 号 p. 149-154
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     ロボット支援手術教育を先行して受ける専攻医に対する教育カリキュラムの有用性と, その専攻医におけるロボット支援下根治的前立腺全摘除術 (RARP) の手術成績を後方視的に検討した. 当院の手術教育下で専攻医が90%以上執刀した症例をResident RARP (rRARP), rRARP以外の症例, すなわち, 主に指導医が執刀した症例をStaff RARP (sRARP) と定義し, 2019年1月から2021年3月に東京医療センターで施行された159例をその2群に分け, 手術成績を比較した. rRARPは, sRARPと比べ手術時間, コンソール時間は有意に長くなるが, 尿込み出血量, 周術期合併症発症率, 術後在院期間, 切除断端陽性率に有意差は認めなかった. 専攻医の手術教育において, 本カリキュラムは有用と思われた.

  • 小池 宏幸, 岩橋 悠矢, 出口 龍良, 山下 真平, 吉川 和朗, 柑本 康夫, 原 勲
    2022 年 35 巻 1 号 p. 155-159
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

    【目的】当院でのロボット支援前立腺全摘 (RARP) 術後鼠径ヘルニアの発症率, および発症に寄与する因子を同定した. 【対象と方法】当科にて2012年12月から2019年12月までにRARPを施行した670例に対して鼠径ヘルニアに関するアンケート調査を行い, 回答を得た545例 (81.3%). その内, RARP術前に鼠径ヘルニアを発症していた37症例を除外した508例を対象とした. 術前因子, 周術期因子から, 術後鼠径ヘルニア発症に寄与する因子を後ろ向きに検討した. 【結果】対象患者は中央値で年齢69歳 (四分位65-72), BMI 24.1 (22.1-26.2), 術前PSA 8.12 ng/mL (6.20-11.42) であった. 91例 (17.9%) が術後ヘルニアに対して修復術を施行していた. 右49例, 左15例, 両側26例, 不明1例で, 右側に多く鼠径ヘルニアを発症していた (p<0.01). ヘルニア修復術までの期間に関するlog-rank検定にて, 術前PSA 8.13 ng/mL未満 (p<0.01), BMI 24.1未満 (p<0.01) が術後ヘルニア発症に寄与する因子として同定された.

  • 岩本 秀人, 森實 修一, 引田 克弥, 本田 正史, 武中 篤
    2022 年 35 巻 1 号 p. 160-164
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     鳥取大学で施行したロボット支援副腎摘出術 (RA) の初期治療成績について検討した. 対象は2020年6月から8月までに片側の副腎腫瘍と診断され, 当院でRAを施行した3例で, 手術にはda Vinci Xiを使用し, 全例で経腹膜アプローチを選択した. 患者背景では, 平均年齢は51歳, 性別はいずれも男性, 原疾患はクッシング症候群, 褐色細胞腫, 原発性アルドステロン症がそれぞれ1例ずつ, 患側は右2例および左1例, 平均腫瘍径は20.7 mmであった. 手術成績では, 平均手術時間は110分, 平均コンソール時間は51分, 平均出血量は20 mLであった. 周術期合併症では, Clavien-Dindo分類のGrade 2以上の合併症は全例で認めなかった. 当院におけるRAの初期治療成績は, 諸家の報告と比較して遜色ない結果であった.

症例報告
  • Yosuke Shibata, Kimito Osaka, Takeaki Noguchi, Mitsuyuki Koizumi, Taka ...
    2022 年 35 巻 1 号 p. 165-167
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

    Background : Collecting duct carcinoma is a rare cancer with a poor prognosis, and surgery is the first choice of treatment. There are few reports of partial nephrectomy because these cancers are often discovered at an advanced stage.

    Case Presentation : A 69-year-old man underwent robot assisted partial nephrectomy for an 18-mm left upper pole renal tumor. Pathological examination revealed that the tumor was a collecting duct carcinoma ; pT3aN0M0. A treatment decision of curative resection was made, and a follow-up policy was adopted. Seventeen months after surgery, no recurrence was observed.

    Conclusion : This case suggests that robot-assisted partial nephrectomy may be an option for small-diameter collecting duct carcinoma.

  • 長尾 賢太郎, 岩田 健宏, 西村 慎吾, 高本 篤, 佐古 智子, 枝村 康平, 荒木 元朗, 渡邉 豊彦, 那須 保友, 小林 泰之
    2022 年 35 巻 1 号 p. 168-172
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

     我々が経験したロボット支援下前立腺全摘除術におけるインシデントを報告する. 症例は70歳代男性. 手術はda Vinci Xiで行われた. 術中, 1stポートのインストゥルメントを入れ替えた際に, モノポーラシザースよりチップカバーが外れ, 紛失した. 腹腔内や術野内外をX線透視も用いて探索するも見つからず, Computed tomographyを施行したところ, 1stポート造設部の皮下に迷入していた. その後は手術を再開し, 合併症なく終了. チップカバーは画像と同部位の皮下より摘出された. 手術映像を見返したところ, チップカバーが適切に装着されておらず, インストゥルメント交換の際にトロッカーが皮下まで抜けていたことが判明した. 本件のようなインシデントを予防するためには, チップカバーの適切な装着と, インストゥルメントの正しい手順での交換および交換時の確認が必要である.

feedback
Top