日本食品工学会誌
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原著論文
市販の増粘剤から調製した溶液とヨーグルトの流動特性および咽頭部流速(嚥下障害者用介護食に関連して)
田代 晃子小野 景子長谷川(谷米) 温子熊谷 日登美熊谷 仁
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2010 年 11 巻 4 号 p. 177-185

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抄録

嚥下障害者(dysphagic patients)用介護食としての安全性を評価するために,市販の増粘剤から調製した溶液の粘度μおよび咽頭部(pharynx)での流速を,ヨーグルトのモデル食塊(bolus)である“(カードを)破壊したヨーグルト”(以下,“破壊ヨーグルト”)と比較した.流速スペクトルの形状と流速とから,“破壊ヨーグルト”の流動特性はヨーグルトの食塊に近いと考えられた.“ヨーグルト状”の増粘剤溶液の粘度μの値は,ずり速度 が10 s-1付近において,“破壊ヨーグルト”の見かけの粘度μappの値より小さかった.また,介護食の安全性の指標である最大流速Vmaxの値に関しては,“ヨーグルト状”や“ジャム状”の増粘剤溶液の方が“破壊ヨーグルト”の値より大きかった.これらのことは,“ヨーグルト状”の増粘剤溶液は,ヨーグルトの食塊と同じ流動特性をもたず,ヨーグルト程度に誤嚥しにくいとはいえないことを示している.

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© 2010 一般社団法人 日本食品工学会
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