日本食品工学会誌
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解説
食品加熱操作における熱・水分移動・反応の工学的研究
酒井 昇
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2018 年 19 巻 2 号 p. 57-78

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抄録

筆者は,最適な加熱操作の検討を目的として,種々の加熱法を用いた食品の加熱操作について工学的に研究を行ってきた.ここでは以下の4つのテーマに分け,その内容を概説した.(1)熱水分移動と収縮変形:加熱操作で最も基本となる熱移動と水分移動の理論的解析を示した.さらに加熱操作時に問題となる食品の収縮変形とクラック生成の解析法を示した.(2)対流を伴う熱移動:容器内で対流が発生すると熱移動速度は伝導食品に比べてはるかに大きくなり,自然対流の計算が必要になる.非ニュートン流体の液状食品でも見かけ粘度を用いることにより温度変化が予測できることを示した.また,CFDを用いた鍋内対流の解析について概説した.(3)内部発熱を伴う加熱操作:マイクロ波加熱および通電加熱では食品の内部から加熱できるため,従来の加熱法よりも速く加熱できるが,加熱むらも発生する.温度分布を予測するための,電磁界解析と熱伝導解析を連成した解析手法を説明した.(4)加熱に伴う化学反応:加熱に伴い種々の化学反応が起こり,食品の品質に影響を及ぼす.ここでは,魚焼成過程のタンパク質変性と焼き色の呈色を例として,反応の速度論的解析について説明した.

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© 2018 一般社団法人 日本食品工学会
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