日本食品工学会誌
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凍結食品中の氷結晶成長の予測と制御
萩原 知明
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2018 年 19 巻 2 号 p. 79-88

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抄録

氷結晶の再結晶化の理解を深め,その予測と制御ならびに高品質な凍結貯蔵技術の実現を目指した筆者らの研究成果を概説した.再結晶化に伴う氷結晶の形状変化は,フラクタル解析を用いることで,定量的に評価できた.種々の凍結糖溶液中の氷結晶の再結晶化進行速度は,NMRから求められる凍結濃縮相の水の拡散係数およびスピン-スピン緩和時間T2,誘電緩和から得られる水の緩和時間とよい相関があり,これらの値を測定することで,再結晶化速度定数の大小関係を推定可能なことが示唆された.凍結スクロース溶液中の氷結晶の再結晶化速度は,ガラス転移温度以下で急激に小さくなった.これらの結果は,凍結濃縮相の水の運動性は氷結晶の再結晶化速度を支配する重要な因子であることを示しているものと考えられた.氷結晶の再結晶化の進行を効果的に遅らせる働きのある不凍タンパク質(AFP)の再結晶化抑制能を定量的に評価し,1型AFPは1μg/mL程度の濃度でスクロース溶液中の再結晶化を有意に抑制した.東北地方の水産物からのAFPの探索を行い,AFPを含む魚種としてマダラおよびマコガレイの2種類を見出すとともに,マダラに関しては,漁獲時期ならびに加熱処理が再結晶化抑制能におよぼす影響についても明らかにした.

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© 2018 一般社団法人 日本食品工学会
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