2025 年 26 巻 1 号 p. 1-9
食品製造のためのモデル開発において,種々の製品品質を製品組成とプロセスの操作条件から定量的に導くことは大きなモチベーションである.本稿では,凍結乾燥プロセスのモデル化に関する筆者の研究を紹介する.凍結乾燥プロセスにおける氷結晶形成は,乾燥速度を決定する重要な因子であるが,形成する氷結晶の平均サイズを凍結のシミュレーションによって推算し,ここから乾燥進行のシミュレーションへと繋げられることを示した.また,食品凍結乾燥の多くは外表面が受け取る輻射熱を主たる熱源として進行させるため,三次元的に乾燥が進行する.これを一次元的に取り扱える単純化したモデルを提案し,このモデルによる乾燥シミュレーションの検証結果を示した.さらに,凍結乾燥製品の品質と関わるコラプスの発生をシミュレートする試みについても紹介し,コラプスに伴う乾燥製品の形状変化を定量データとして扱う可能性について示した.