日本食品工学会誌
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酵素添加による洗米排水成分の凝集・沈降特性とその機構
渡辺 昌規津山 力一瀬 和紀柏村 崇佐々野 和雄渡辺 健吾
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2007 年 8 巻 3 号 p. 165-172

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抄録

本研究では, 酵素添加による洗米排水中固形成分の凝集・沈降現象と固形成分表層の電気化学的性状との関係, 洗米排水中に含まれる陽イオン種 (対イオン種) との関与について検討するとともに, 凝集・沈降性付加による固形成分除去特性についても併せて検討を行った.その結果, 酸性プロテアーゼ・ペプチダーゼを含有するプロテアーゼM添加により得られた洗米排水上清成分中の固形成分は他の酵素剤添加の場合に比べ, 粒子径の平均値などすべてのパラメータにおいて最小値を示し, 本酵素添加は幅広い範囲の粒径の固形成分を沈降分離させることが可能であった.またFT-IRを用い, 洗米排水固形成分表層の負電荷を形成している官能基の特定を行った結果, プロテアーゼM処理により水酸基 (-OH) 由来の吸収増大 (透過率の低下) が確認された.このことから, 洗米排水中の固形成分表層は, プロテアーゼM添加により水酸基 (-OH) 由来の負の表面電位が増大し, 汚泥容積を減少させたものと考えられた.さらに, 種々の金属キレート剤添加による洗米排水の汚泥容積の変化について検討を行った結果, 洗米排水中の固形成分の凝集・沈降には, 洗米排水中に含まれる固形成分由来の陽イオンが関与していることが示された.以上の結果より, 洗米排水中へのプロテアーゼM添加による固形成分の凝集・沈降は, 酵素添加により, 固形成分表層の負電荷の形成, 陽イオン (金属イオン) 放出が促進され, それぞれが静電的相互作用により, 架橋形成によるマクロ分子を形成し, 至っては洗米排水中固形成分を凝集・沈降させていることが示唆された.

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