日本食品微生物学会雑誌
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原著
食品検体の腸管出血性大腸菌O157・O26汚染一次スクリーニング用Multiplex PCR法の開発
徳永 曉彦大澤 朗伊豫田 淳寺嶋 淳渡辺 治雄
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2009 年 26 巻 1 号 p. 7-15

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抄録

腸管出血性大腸菌(EHEC) O157およびO26による食品汚染を検査するための一次スクリーニング法を開発した.筆者らはまず,さまざまな血清型のEHEC株,志賀毒素産生性大腸菌株,および腸管病原性大腸菌O55株について,toxB(EHEC O157 : H7の巨大プラスミド上にエンコードされている遺伝子)の分布解析を行い,本遺伝子がEHEC O157およびO26に特徴的な遺伝子であることを見いだした.EHEC O26が保有しているtoxB の塩基配列を決定したところ,EHEC O157と高い相同性(塩基配列相同性:91%,アミノ酸相同性:89%)を有しているものの,塩基置換レベルの差異が存在していることが明らかとなった.そこで筆者らは,本遺伝子における塩基配列の違いを利用し,食品検体におけるEHEC O157とO26汚染を一括,かつ両者を識別して検出することが可能なmultiplex PCR法の確立を試みた.今回筆者らが考案したmultiplex PCR法は,一部EHEC O121も検出されてしまうが,供試したすべてのEHEC O157およびO26を検出することが可能であった.また,EHEC O157とO26 (および一部のO121) は,増幅される産物の大きさの違いにより,区別することが可能であった.食品培養液中のPCR阻害物質の影響を考慮し,EHECによる食中毒の主要な汚染食品である牛ミンチ,牛レバー,貝割れ大根を用いて本PCR法の感度,ならびに人為的にEHEC O157あるいはEHEC O26, もしくはその両方を接種したサンプルからの菌の検出を試みたところ,本PCR法は増菌培養液中にEHEC O157もしくはO26が105 CFU/ml 以上含まれていれば菌を検出でき,増菌前の食品1 g当たりのEHEC汚染数が1コピーに満たない(0.3~0.5コピー/1 g検体)場合でも検出することが可能であった.以上の結果から,が確立したmultiplex PCR法が,食品検体からEHEC O157/O26を検出するための一次スクリーニング法として重要なツールとなることが示唆された.

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© 2009 日本食品微生物学会
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