日本食品微生物学会雑誌
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26 巻 , 1 号
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総説
原著
  • 徳永 曉彦, 大澤 朗, 伊豫田 淳, 寺嶋 淳, 渡辺 治雄
    原稿種別: 原著
    2009 年 26 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    腸管出血性大腸菌(EHEC) O157およびO26による食品汚染を検査するための一次スクリーニング法を開発した.筆者らはまず,さまざまな血清型のEHEC株,志賀毒素産生性大腸菌株,および腸管病原性大腸菌O55株について,toxB(EHEC O157 : H7の巨大プラスミド上にエンコードされている遺伝子)の分布解析を行い,本遺伝子がEHEC O157およびO26に特徴的な遺伝子であることを見いだした.EHEC O26が保有しているtoxB の塩基配列を決定したところ,EHEC O157と高い相同性(塩基配列相同性:91%,アミノ酸相同性:89%)を有しているものの,塩基置換レベルの差異が存在していることが明らかとなった.そこで筆者らは,本遺伝子における塩基配列の違いを利用し,食品検体におけるEHEC O157とO26汚染を一括,かつ両者を識別して検出することが可能なmultiplex PCR法の確立を試みた.今回筆者らが考案したmultiplex PCR法は,一部EHEC O121も検出されてしまうが,供試したすべてのEHEC O157およびO26を検出することが可能であった.また,EHEC O157とO26 (および一部のO121) は,増幅される産物の大きさの違いにより,区別することが可能であった.食品培養液中のPCR阻害物質の影響を考慮し,EHECによる食中毒の主要な汚染食品である牛ミンチ,牛レバー,貝割れ大根を用いて本PCR法の感度,ならびに人為的にEHEC O157あるいはEHEC O26, もしくはその両方を接種したサンプルからの菌の検出を試みたところ,本PCR法は増菌培養液中にEHEC O157もしくはO26が105 CFU/ml 以上含まれていれば菌を検出でき,増菌前の食品1 g当たりのEHEC汚染数が1コピーに満たない(0.3~0.5コピー/1 g検体)場合でも検出することが可能であった.以上の結果から,が確立したmultiplex PCR法が,食品検体からEHEC O157/O26を検出するための一次スクリーニング法として重要なツールとなることが示唆された.
  • 柏木 さやか, 馬場 浩, 吉田 信一郎, 宇田川 俊一
    原稿種別: 原著
    2009 年 26 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    変敗食品から分離された糸状不完全菌類Arthrinium 属のカビについて菌種を同定した.また,変敗原因菌であることを確認するために,分離菌株のガス産生能試験および嫌気条件下での生育,耐熱性試験を行った.比較のため,関連の標準菌株と既存の食品・環境由来分離株などを併せて供試した.
    1) 2003年,麺つゆの膨張事故品から分離したカビ菌株について,ポテト・キャロット寒天培地およびオートミール寒天培地を用いて,25℃,暗所およびブラックライト照射下で5~20日間培養し,形成された集落,分生子形成細胞,分生子を観察して,Apiospora montagneiArthrinium アナモルフと同定した.また,2002年に変敗したトマト加工品から分離された1菌株も同一種と確認した.
    2) 2002年,イチゴジャムに発生した白色の変質部分から分離したカビ菌株について,1)と同様の条件下で培養し,同定を行った結果,Arthrinium phaeospermum であることが判明した.
    3) 以上の変敗食品由来株および標準菌株など,Apiospora montagneiArthrinium アナモルフ5菌株,A. phaeospermum 5菌株についてガス産生能および嫌気条件下の生育について試験を行った結果,供試したすべてのArthrinium菌株が使用したパウチ袋(酸素透過率1.49, 48.5および2,500 ml/m3・24 h)中の5%グルコースYM液体培地中で生育し,7~14日間後にはガス(二酸化炭素)を産生し,袋の膨張が観察された.また,PDA培地,アネロパック®ケンキを使用,25℃,7日間培養後の集落形成を調べた結果,Apiospora montagneiArthrinium アナモルフ全5菌株,A. phaeospermum の3菌株について生育が認められた.特に前者では好気状態の約60~70%程度の生育に達した.以上の知見から,食品にしばしば汚染が見られるArthrinium 属菌について,加工包装食品の膨張事故原因となる可能性が示唆された.
    4) ガス産生能試験に用いた10菌株について加熱媒体としてリン酸緩衝生理食塩水を用い,TDT試験管法により耐熱性試験を行った.接種源としてポテト・キャロット寒天培地,25℃,ブラックライト照射下で23日間以上培養し,形成された分生子を使用した.耐熱性を示した菌株は,変敗イチゴジャムから分離したA. phaeospermum 1株のみで,90℃,5分間の加熱処理後もわずかに生残した.この結果から,Arthrinium 属菌の胞子耐熱性は個々の菌株レベルの特徴と考えられた.
    本研究で得られた知見は,特に加工食品におけるカビ汚染の制御の面で役立つものと思われる.
調査
事例
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