日本食品微生物学会雑誌
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原著
ノロウイルス検査における細菌培養処理法(A3T法)の市販カキを用いた実用化に向けた検討
秋場 哲哉永野 美由紀田中 達也森 功次林 志直甲斐 明美
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2011 年 28 巻 2 号 p. 128-132

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抄録

近年ノロウイルス(NV)を原因とする食中毒事件が多発する中で,われわれは食品からのNV検出率向上を目的に,細菌を利用して食品由来成分を取り除く検体処理方法(A3T法)の実用化に向けた検討を行った.今回検査時における同法の操作の簡素化を図るため,冷凍保存した15%グリセリン加菌液を添加用菌液として用いることを試みた.また,A3T法による検査に20%乳剤を用いることでNV検出率の向上を図った.国内産の生食用および加熱調理用生カキ102検体を対象に実施した検討において,10%乳剤を用いた検査では厚生労働省通知による検査法では検出されないNVが,A3T法により19検体から検出された.20%乳剤を用いた検査では,10%乳剤でNV陽性となった検体のうち3検体がNV不検出となったものの,陽性数は26検体に上昇した.これらのことは,冷凍保存菌液を用いるA3T法は従来の手法とほとんど変わらない操作でNV検出率の向上が図れる実用的手法であり,20%乳剤を用いることでカキのNV汚染をより明らかとすることが可能であると考えられた.また今回の検討結果は,カキのNV汚染がこれまで報告されていた以上に広く国内に存在していることを示すものであり,早急な対策の必要性を示唆するものであった.

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© 2011 日本食品微生物学会
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