日本食品微生物学会雑誌
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原著
プールした糞便検体を使用したマルチプレックスPCR法によるサルモネラ,腸管出血性大腸菌,赤痢菌のスクリーニング法の開発
荒川 琢東隆 寛萩原 直樹西井 重明加藤 文男井上 浩明
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2012 年 29 巻 2 号 p. 101-107

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抄録
サルモネラ,腸管出血性大腸菌,赤痢菌の検便検査の多数の検体から陽性検体をスクリーニングする方法として,プールした糞便検体から核酸の抽出精製や増菌培養を経ないマルチプレックスPCRでこれらの菌を検出する方法が検討された.
1) マルチプレックスPCR法を用いることにより,100個の検体をプールした中から,1個の7×104cfu/g のサルモネラ陽性検体を含む場合,1個の7×104cfu/g の腸管出血性大腸菌O157陽性検体を含む場合,1個の4×104cfu/gの赤痢菌陽性検体を含む場合を検出することができた.培養法での検出限界はサルモネラおよび腸管出血性大腸菌O157で7×104cfu/g,赤痢菌で4×105cfu/gであったので,100個以下の検体をプールした場合,マルチプレックスPCRで検出すれば培養法と同等以上の感度で検出でき,スクリーニング法として有効な感度であることが示された.
2) 他方,マルチプレックスPCRにより死菌が検出される可能性を検証するため,ゲノムDNAを糞便に添加したモデル試料を作製し検出を試みた.その結果,糞便中に添加したゲノムDNAはマルチプレックスPCRでは検出されず,ゲノムDNAが糞便中に溶出した死菌が検出される可能性は低いと思われた.
3) 実際の検便検体2,000検体を50検体ずつプールしてマルチプレックスPCRで検出しスクリーニングを行った.スクリーニングを行わず培養法で検査を行った場合との相関は,陽性一致率100%,陰性一致率99.95%であった.
以上の結果より,本研究で検討された方法は,検便検査の多数の検体から陽性検体をスクリーニングする方法として有効であると思われた.
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© 2012 日本食品微生物学会
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