日本食品微生物学会雑誌
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Humicola fuscoatraによるアフラトキシンB1の変換に関する検討
田端 節子上村 尚井部 明広青山 照江田村 行弘
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1996 年 12 巻 4 号 p. 243-248

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抄録

食品にしばしば汚染が見られ, 強い発癌性物質であるアフラトキシンB1 (AFB1) を資化すると報告された6種の糸状菌 (Aspergillus fumigatus, Paecilomyces lilacinus, P. inflatus, Humicola fuscoatra, Penicillium spinulosum, Trichoderma aureoviride) を用いてAFB1の変換について検討した.本論文では主にHumicola fuscoatraによる変換について述べる.
AFB1を添加した培地に6種の菌を接種し, 25℃で4週間培養後の培地中のAFB1量はほとんどの菌で添加量の10%以下であった.そのうち, Penicillim spinulosumは菌体中に80%のAFB1を含んでいたが, 他の5種では菌体中のAFB1は30%以下と少なく, AFB1変換が起こっていると推察された.
これらの菌の菌体マットを用いて滅菌の有無によるAF変換能の差を調べたところ, Humicola fuscoatraでは大きな差が認められた.無処理の菌体は添加したAFB1を90%減少させたが, 滅菌した菌体はAFB1量を変化させなかった.このことから, この菌によるAFB1の変換は生化学的反応であることが示唆された.
この菌によるAFB1の変換生成物をTLCおよびHPLCで検討したところ, 減少したAFB1はすべてアフラトキシコールAおよびBに変換されたことがわかった.

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