日本食品微生物学会雑誌
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大分県で発生した下痢原性大腸菌食中毒の疫学的, 細菌学的検討
渕 祐一成松 浩志緒方 喜久代竹田 義弘帆足 喜久雄橘 宣祥
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1997 年 14 巻 2 号 p. 115-122

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抄録
大分県内の調理施設を原因とし, 原因菌が分離された下痢原性大腸菌による食中毒5事例について疫学的および細菌学的検討を行った.
1) 5事例中2事例はEPECによる食中毒で, 原因菌としてE. coli O86a:H27およびE. coli O44:H18を, また3事例はをETECによる食中毒で, 原因菌としてE. coli O27:H27 (ST産生菌), E. coli O153:H10 (ST産生菌) およびE. coli O25:HNM (LT産生菌) を検出した.
2) 1991年9月に発生したEPECのO44:H18による食中毒は, 患者数406名に達する大規模なもので小学校給食が原因であった. 患者便から検出したものと同じ血清型のEPECが検食の冷麺から検出され, プラスミドプロファイルおよびRAPDプロファイルによる遺伝子解析でも両者は同一起源によるものと判断された.
3) 病原因子を明らかにする目的で, EPEC事例につきHeLa細胞およびHEp-2細胞の付着性試験, EAFプラスミドおよびeae遺伝子の検索を行ったが, いずれも検出しなかった. ETEC食中毒では, STおよびLTの産生とその遺伝子の保有を確認した.
4) 疫学調査の解析では, ETECによる食中毒はEPEC食中毒と比較して, 患者は10回以上の下痢および嘔吐と38℃以上の発熱の発現頻度が高い傾向を示した. 潜伏時間もETEC食中毒の方が長くなる傾向が認められた.
なお本報の要旨の一部は, 第66回日本感染症学会西日本地方会総会 (1996年11月, 徳島市) で報告した.
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