日本食品微生物学会雑誌
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PCR法による水, 食肉および野菜中の大腸菌と大腸菌群の検出に関する検討
刑部 陽宅田中 大祐清水 美和子磯部 順子木全 恵子香取 幸治永井 美之
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2004 年 21 巻 3 号 p. 187-192

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抄録
PCR法を水と食品の大腸菌および大腸菌群検査に適用するための検討を行った.PCR法では, 大腸菌のtransferase遺伝子 (wecF), β-galactosidase遺伝子 (lacZ) およびE.coli 16S rRNA遺伝子 (E.coli 16S rRNA) を標的としたプライマーを使用した.結果は次のようであった.
1) ヒトおよび食品由来大腸菌のwecF, lacZおよびE.coli 16S rRNA遺伝子保有率はそれぞれ12/12 (100%), 99/99 (100%), 99/99 (100%), 食品由来Klebsiella属, Citrobacter属などの大腸菌群のwecF, lacZ E. coli16S rRNA遺伝子保有率はそれぞれ28/63 (44%), 70/177 (39%), 0/177 (0%) であった.
2) 食品69検体 (食肉23検体, 野菜46検体) のBGLB培養液からのwecF, lacZ E. coli 16S rRNA遺伝子検出率はそれぞれ, 73%, 65%, 37%であった.E. coli 16S rRNA遺伝子検出と大腸菌検出との間には, 統計的に有意な相関が認められた.しかしE.coli 16S rRNA遺伝子検出と大腸菌群検出との間に有意な相関は認められなかった.wecFあるいはlacZ遺伝子検出と大腸菌群検出との間にも, 有意な相関は認められなかった
3) 水道の原水など153検体の水の大腸菌汚染をコリラート培地を用いた特定酵素基質法で調べたところ, E.coli 16S rRNA遺伝子検出と大腸菌検出との間に有意な相関が認められた.
以上の結果から, E.coli 16S rRNA遺伝子を標的としたPCR法は, 水および食品中の大腸菌を迅速, かつ特異的に検出する目的に使用できることが示唆された.
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