2014 年 78 巻 2 号 p. 86-96
海況の短期変動が漁業に与える影響を解明するために,2000年から2007年まで九州西部沿岸域での海面水温の集中的なモニタリングを行った.モニタリングは,九州西部沿岸の4箇所での連続的な海面水温の測定,沖合を航行するフェリーに搭載した水温計による測定,漁業調査船によるCTD観測により実施した.モニタリングの結果,2007年の早春に海面水温が急上昇する現象を捉えた.人工衛星の赤外線画像から,暖水が黒潮の北端部に由来し,沖・沿岸の2つの経路でこの海域に広がったことが示された.沖の経路により供給された暖水は,五島灘と天草灘の中央部に高気圧性渦を形成し,1か月の長期にわたり持続した.沿岸の経路から供給された暖水は100m程度の厚みを持ち,五島灘の最北部にまで到達した.一方,九州西部沿岸への暖水の供給は他の季節にも生じるものの,沿岸と沖合での水温差が小さく海面水温の変動が不明瞭となることを示した.