2016 年 80 巻 1 号 p. 1-19
三陸沖の底魚漁業の漁獲統計データおよび底魚類現存量調査データを用いて,底魚群集を中心に46機能群を有したEcopath生態系モデルを構築し,Ecopathのアウトプットや指標から,生態系の食物網構造を記述し,漁業の生態系への影響評価を行った.重要な餌生物となる機能群は,マクロベントス,中深層性魚類,ツノナシオキアミであったが,これらに対する捕食者間の餌選択性は異なった.また,現存量が小さいものの,三陸沖の底層生態系において鍵となる機能群は,中深層性さめ類,マダラ2+歳魚およびムネダラであったが,これら間の餌生物を巡る重複度は低く,競合関係は見られなかった.漁業活動の生態系への影響評価において,漁獲量に必要な基礎生産量は,かけ廻し漁業が2そう曳き網漁業よりも低く,高次捕食者の餌生物に対する影響は逆にかけ廻し漁業が2そう曳き網漁業よりも高かった.