魚類の個体群構造や移動履歴を明らかにすることは,回遊生態への理解を深めるだけでなく,水産重要種における資源の管理のためにも非常に有用である.近年,魚類の回遊生態研究の手法として,耳石の微量元素・安定同位体組成を自然標識(natural tag)として用いる研究が注目されている.そこで本稿では,耳石の微量元素・安定同位体組成の変動メカニズムとその取り込み過程,または分析データの取扱いなどについて,耳石の微量元素・安定同位体組成を生態研究に応用する際の有用な指針となるように地球化学的な側面を交えて概説した.