水産海洋研究
Online ISSN : 2435-2888
Print ISSN : 0916-1562
81 巻 , 3 号
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総説
  • 横内 一樹, 天野 洋典, 石村 豊穂, 白井 厚太朗
    2017 年 81 巻 3 号 p. 189-202
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2021/02/26
    ジャーナル フリー

    魚類の個体群構造や移動履歴を明らかにすることは,回遊生態への理解を深めるだけでなく,水産重要種における資源の管理のためにも非常に有用である.近年,魚類の回遊生態研究の手法として,耳石の微量元素・安定同位体組成を自然標識(natural tag)として用いる研究が注目されている.そこで本稿では,耳石の微量元素・安定同位体組成の変動メカニズムとその取り込み過程,または分析データの取扱いなどについて,耳石の微量元素・安定同位体組成を生態研究に応用する際の有用な指針となるように地球化学的な側面を交えて概説した.

原著論文
  • 塚原 洋平, 宍戸 文香, 秦 宇瓊, 中谷 直樹
    2017 年 81 巻 3 号 p. 203-210
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2021/02/26
    ジャーナル フリー

    沿岸海域では外海と陸域からの双方の影響が混合する場として,環境の変動が激しく,また,人為的な経済活動における環境変化も加わり,複雑な環境場を有している.それら環境因子の変動が魚類等の生物量に与える影響を定量的に把握するためには数理モデルによる解析が有効であるが,数理モデルの構築に必要な生態学的な知見が不足している.本研究では,大阪湾にて漁獲されるイカナゴを対象に,統計データを用いた数理モデルの構築を目的とする.まず,最適変換法を用いて,非線形性を含む環境応答を抽出した後,その応答を定式化することで環境応答を考慮した個体群動態モデルの構築を行った.また,数が増えたパラメータの決定に対して,MCMC法を適用することで,最適なパラメータを推定した.その結果,イカナゴの個体群動態の変動に関する環境因子と漁獲の関係などの定量的な評価が可能となった.

  • 大畑 聡, 梶山 誠, 八木 宏
    2017 年 81 巻 3 号 p. 211-221
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2021/02/26
    ジャーナル フリー

    2007–2008年の観測データから,東京湾の盤洲干潟沖へ貧酸素水塊が分布する現象は,2つのパターンに類別されることを明らかにした.その一つは,南偏風が連吹するときに外海から冷たく重い海水が浸入するときに発生し,それまで湾中央部の底層に分布していた貧酸素水塊が同域で中層へ分布深度が変わるとともに,盤洲干潟沖へも移動した.このとき盤洲干潟沖では,貧酸素水塊がごく浅い水深にまで及ぶため,これが干潟へ波及する危険性が高まった.もう一つは,北偏風が数日以上吹き続く時に,湾中央部の底層に分布していた貧酸素水塊が盤洲干潟沖へ移動する現象であった.この時,盤洲干潟沖では貧酸素水塊はごく底層にのみ分布するので,干潟の貝類に影響を与える可能性は低い.しかし,同海域にはトリガイ等有用生物が生息しており,これらの漁場形成には影響を与えると考えられた.

  • 原田 和弘, 宮原 一隆
    2017 年 81 巻 3 号 p. 222-229
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2021/02/26
    ジャーナル フリー

    兵庫県の加古川河口周辺海域において,陸域からの栄養塩供給が近隣のノリ漁場に与える影響を調査した.当海域における表層の溶存態無機窒素(DIN)濃度は,東播磨港別府西港区地先の加古川河口東部沿岸に高濃度域が分布する事例の多いことが判明した.このDINの高濃度域は,河川水および産業排水や下水処理水を含む港湾からの流出水に由来すると考えられ,近傍に位置する加古川河口東部のノリ漁場では,沿岸部を中心にそれらによる窒素の供給を安定的に受けていることが示唆された.

  • 曽根 亮太, 和久 光靖, 山田 智, 鈴木 輝明, 高倍 昭洋
    2017 年 81 巻 3 号 p. 230-244
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2021/02/26
    ジャーナル フリー

    三河湾で6月から10月にかけて水質観測と同時に底生性魚介類を採集し,主要種の貧酸素化に対する時空間分布を調査した.また,資源量の推移から漁獲や加入・成長を考慮して死亡量を算出し,貧酸素化進行期(6–9月)の自然死亡係数および死亡率を求めた.貧酸素化に伴い主要魚介類の分布域は縮小し,資源量も大きく減少した.自然死亡係数(month-1)は期間により変動したが,6–9月平均値はカレイ類で0.41–0.85,ガザミで0.42–0.46,シャコで0.46–0.76,トリガイで1.16–1.26と推定され,生物特性値や貧酸素化の影響が低い海域の観測値から算出された係数と比べて高かった.また,死亡率は解析対象種すべてで50%以上となり,貧酸素化は底生性魚介類の各個体群を大きく減耗させることが明らかとなった.特にイシガレイやクルマエビでは湾奥部が若齢期の生息域となる一方で,沿岸開発に伴う地形改変が死亡リスクを高め,湾奥から湾口・外海をつなぐ生態学的回廊が遮断されている可能性が考えられた.

  • 田崎 智晶, 赤司 有三, 加藤 敏朗, 宮向 智興, 今尾 和正, 鈴木 輝明, 高部 昭洋
    2017 年 81 巻 3 号 p. 245-258
    発行日: 2017/08/25
    公開日: 2021/02/26
    ジャーナル フリー

    三重県志摩市の的矢湾奥に位置する伊雑ノ浦は,ヒトエグサ(Monostroma nitidum)の養殖が盛んで,1970年頃は300tを超える生産量があった.しかし1980年頃から生産量が急激に低下し,漁業者はその原因究明を求めている.そこで,2014年の春季および夏季に濁度を含む様々な海域環境を気象状況とともに連続的に観測し,濁りの現状および発生要因を明らかにした.その結果,ヒトエグサ葉体の成長に影響を与える濁度7 FTUを超える時間の割合は春では17–66%,夏では26–73%と極めて高かった.高濁度が常態化した要因としては以下のことが推測された.i)ダム建設等に伴う河川流量の減少により,浦奥から浦央にかけての平均流が弱化し,かつ時計回りの環流傾向となった.ii)接続水域からの表層流出が相対的に弱まり,流入SS(Suspended Solid)および浦内で生産および再懸濁したSSが浦内から流出し難くなった.iii)浦内に滞留,沈降したSSは,風のみならず潮汐によっても常時再懸濁するようになった.iv)SSの堆積が浦内の底質環境の悪化と底生生物の減少を招き,底泥の自浄機能を低下させた.

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