マサバは生時にはその全身が鱗と粘液に覆われるが,まき網では漁獲時にこれらが脱落し誤飲されることによって,胃内容物分析結果が正確でない可能性が指摘されている.そこで本研究では,誤飲の影響がほとんどないと考えられる釣獲によって得たマサバと,まき網で漁獲されたマサバの胃内容物を比較した.その結果,まき網では99個体中90個体(90.9%)から誤飲物と考えられる鱗や粘液状内容物が出現したが,釣獲ではこれらはほとんど出現しなかった(8.3%).まき網で漁獲されたマサバの胃に含まれた鱗がさば属の鱗の特徴を示し,胃内容物重量指数は,誤飲物を含む重量で比較するとまき網標本で有意に高かったが,誤飲物を除くと差はわずかであった.以上から,鱗や粘液状内容物は漁獲時の誤飲物であると判断された.まき網で漁獲されたマサバの胃内容物分析において,誤飲物による影響は大きいと推定され,これらを除いた分析を行うことが求められる.