抄録
1988年12月に, 神奈川県淡水魚増養殖試験場で飼育中のアユ稚魚に発生した大量斃死を伴う一疾病について病理組織学的に観察した結果, 腎臓の類洞内, 脾洞内, 膵臓実質内, 肝臓の類洞内および実質細胞内, 心外膜, 心房筋, 心室筋, 腸管膜および腸管壁にグラム陰性の細菌が認められた。これらの臓器内では細菌は単核性細胞内に貪食された形態で存在し, 一部では細菌の集簇巣として認められた。さらに, 全身の静脈系に著明な循環障害を示唆する組織像が観察され, 心房から心室への移行部には心筋の広範な凝固懐死塊が存在したことから, 本症例は病理組織学的に全身性の細菌感染および循環障害が特徴的であると判断した。