抄録
本稿の研究目的は,変化に直面したBSC運用企業の変化への対処プロセスの解明である。既存研究は,BSC運用企業がなんらかの変化に直面した時,企業による対処が必要であることを明らかにしたものの,その対処プロセスに関する理解が不足している。本稿は,ケーススタディに基づき,COVID-19と社長交代という二つの変化に着目し,変化の発生から結果までの対処プロセスを分析した。また,変化への対処プロセスにおいては,複数の変化が発生した時,個々の変化による異変(Variation)への考慮の重要性,異変による行動に対する選択(Selection)と維持(Retention)の重要性,対処プロセス全体を見る重要性,創業者の重要性と限界を主張した。