農作業研究
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研究報文
知的障害者が農業に従事するための省力化と作業時間短縮の検証
-奈良県の伝統野菜である大和イモを例に-
佐竹 寛之林 孝洋
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2022 年 57 巻 2 号 p. 73-81

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抄録

知的障害者が就農する時の課題として,任せられる仕事が限られていることや,生産効率が低下することなどが挙げられる.そこで本研究では,素工程分解(1動作もしくはその動作の繰り返しだけで行える工程まで分解すること)とポリエステル繊維培地,フェルトポットを組み合わせるとともに,デッドスペースを生かして栽培を行うことで,知的障害のある生徒が自立的に栽培した上で作業時間の短縮が可能か検証した.方法は,特別支援学校高等部の5名を対象に,県内で担い手不足が懸念されている大和イモの栽培を行った.調査は(1)生徒の作業様態の記述,(2)各工程における作業時間の比較,(3)栽培法の違いによる収穫物の比較,の3つを行った.その結果,大和イモの「芽かき」工程に関しては,一部支援者の補助が必要であるが,それ以外の全ての工程を生徒が自立的に実施することができた.作業時間は灌水を除く全工程合計で慣行法476分,繊維培地法313分と163分短縮した.収穫物の生鮮重量の比較では,慣行法より繊維培地法の方が0.1%水準で有意に重かった.一方,「外形」は慣行法の方が0.1%水準で有意に「球形」に近かった.以上のように,素工程と補助具,立地を生かしたフェルトポットでの栽培を通して,知的障害のある生徒が自立的に作業時間を短縮して作業できることが示された.

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© 2022 日本農作業学会
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