農作業研究
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草刈ロボットを導入した獣害防止柵の管理手法
金井 源太好野 奈美子藤本 竜輔
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2024 年 59 巻 4 号 p. 173-186

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抄録

獣害防止柵周囲の雑草管理は,電気柵,メッシュ柵ともに,獣害対策にとって有効であるが,農村地域では労働力不足が進行していることもあり,労力を要する獣害防止柵周囲の雑草管理を適切に行うことは難しく,省力化や無人作業が求められている.本報告では,獣害防止柵周囲の雑草管理省力化のための草刈ロボット導入が獣害防止柵の管理に与える影響を明らかにすることを目的として,市販の草刈ロボットをメッシュ柵および電気柵周囲の雑草管理に導入する試験を行い,獣害防止柵が効果を維持するための管理手法を提示した.メッシュ柵周囲での導入試験の結果,草刈ロボット導入によって柵周囲の雑草を管理することができ,導入による柵支柱の緩み(がたつき)の促進は確認できなかった.草刈ロボットを導入していない場合にも支柱の緩みが進行する事例が認められ,柵の倒壊防止のためには,導入の有無に関わらず,年に1回程度支柱の緩みを確認することが有効であると考えられた.電気柵を設置した圃場での導入試験の結果,草刈ロボットが通過する電線下の雑草管理が可能であった.また,電線地上高200 mmよりも機体高が100 mm程度高い草刈ロボットを運用するに際し,電線の緩みが促進されることが予想されたため,バネとプーリーによって構成される簡易な緊張具を用いたところ,電線の緩みを緩和,防止できることが示された.草刈ロボットの構造上,支柱周囲の雑草を刈残すが,支柱周囲の雑草草高を下段電線よりも低く保つためには1カ月に1回以上の草刈もしくは薬剤散布などの除草作業が必要であると考えられた.

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