カンショ栽培の生産コストの削減を目的に,市販の半自動型野菜移植機で移植を可能とする曲げ苗(茎が180°以上折れないように曲げられた苗)の生産方法の検討および曲げ苗が塊根生産性に及ぼす影響を明らかにした.試作した3種類の曲げ苗生産器具で生産された全長300 mmの曲げ苗を使って半自動野菜移植機で繰出し試験を行った.その結果,繰出し率が88%と最も高かった苗の生産方法は,塩ビ管を中心軸として茎が折れないように苗を巻き付けて,苗の切り口側と先端側を交差させた状態で約1日固定する方法であった.他の生産器具と比べて,曲げ苗の幅が約83 mmともっとも狭かったことから,半自動型野菜移植機の苗の補給用カップから落ちやすくなり繰出し精度が高くなったと考えられた.また,採苗直後の苗では曲げる際に折れることが多いが,5時間程度日陰で放置した苗の折れ率は1%未満であった.この方法を用いた場合の生産能率は,463苗/hであった.‘すずほっくり’と‘べにはるか’の2品種を使い曲げ苗の栽培試験を行った結果,‘すずほっくり’で切り口側からも蔓が伸びる場合があり,収量と塊根数が慣行法よりも増える可能性が示されたが,‘べにはるか’では収量や塊根数に対する影響は,明らかではなかった.
既往の研究において,トマト収穫ロボットのエンドエフェクタには,果実把持部と小果柄切断部が備えられており,多機能化と大型化によって房状に生育する果実へのアプローチが制限され,収穫性能が低下する課題があった.そこで,我々は果実を把持せず小果柄に直接作用し,離層から果実を離脱させる小型化した収穫用エンドエフェクタを開発している.本研究では,この新機構を有する収穫ロボットの収穫性能を向上させるため,新たに果房の移動を制限する果房支持棚と植物体全体の移動を制限する主茎支持棚を考案し,収穫効率への影響を検証した.各支持棚に対して開発中の収穫用エンドエフェクタを実験区ごとに50果ずつアプローチさせ,収穫動作を行った結果,支持棚無しの実験区で29果であったのに対し,果房支持棚の紐2段で45果,主茎支持棚の紐3段で42果の果実を損傷なく収穫でき,収穫性能が向上した.一方,つる下ろしと果房配置の作業時間は支持棚無しの実験区と比較して増加するが,年間を通した総作業時間は手作業収穫と比較して果房支持棚の紐2段で361.6 h/10a,主茎支持棚の紐3段で338.7 h/10aと大幅に低減できた.また,果房支持棚は果房の向きが通路側に揃うため,収穫ロボットの果実や果柄の認識性能の向上にも有効であり,ロボット収穫により適した栽培様式であると考えられた.
獣害防止柵周囲の雑草管理は,電気柵,メッシュ柵ともに,獣害対策にとって有効であるが,農村地域では労働力不足が進行していることもあり,労力を要する獣害防止柵周囲の雑草管理を適切に行うことは難しく,省力化や無人作業が求められている.本報告では,獣害防止柵周囲の雑草管理省力化のための草刈ロボット導入が獣害防止柵の管理に与える影響を明らかにすることを目的として,市販の草刈ロボットをメッシュ柵および電気柵周囲の雑草管理に導入する試験を行い,獣害防止柵が効果を維持するための管理手法を提示した.メッシュ柵周囲での導入試験の結果,草刈ロボット導入によって柵周囲の雑草を管理することができ,導入による柵支柱の緩み(がたつき)の促進は確認できなかった.草刈ロボットを導入していない場合にも支柱の緩みが進行する事例が認められ,柵の倒壊防止のためには,導入の有無に関わらず,年に1回程度支柱の緩みを確認することが有効であると考えられた.電気柵を設置した圃場での導入試験の結果,草刈ロボットが通過する電線下の雑草管理が可能であった.また,電線地上高200 mmよりも機体高が100 mm程度高い草刈ロボットを運用するに際し,電線の緩みが促進されることが予想されたため,バネとプーリーによって構成される簡易な緊張具を用いたところ,電線の緩みを緩和,防止できることが示された.草刈ロボットの構造上,支柱周囲の雑草を刈残すが,支柱周囲の雑草草高を下段電線よりも低く保つためには1カ月に1回以上の草刈もしくは薬剤散布などの除草作業が必要であると考えられた.