既往の研究において,トマト収穫ロボットのエンドエフェクタには,果実把持部と小果柄切断部が備えられており,多機能化と大型化によって房状に生育する果実へのアプローチが制限され,収穫性能が低下する課題があった.そこで,我々は果実を把持せず小果柄に直接作用し,離層から果実を離脱させる小型化した収穫用エンドエフェクタを開発している.本研究では,この新機構を有する収穫ロボットの収穫性能を向上させるため,新たに果房の移動を制限する果房支持棚と植物体全体の移動を制限する主茎支持棚を考案し,収穫効率への影響を検証した.各支持棚に対して開発中の収穫用エンドエフェクタを実験区ごとに50果ずつアプローチさせ,収穫動作を行った結果,支持棚無しの実験区で29果であったのに対し,果房支持棚の紐2段で45果,主茎支持棚の紐3段で42果の果実を損傷なく収穫でき,収穫性能が向上した.一方,つる下ろしと果房配置の作業時間は支持棚無しの実験区と比較して増加するが,年間を通した総作業時間は手作業収穫と比較して果房支持棚の紐2段で361.6 h/10a,主茎支持棚の紐3段で338.7 h/10aと大幅に低減できた.また,果房支持棚は果房の向きが通路側に揃うため,収穫ロボットの果実や果柄の認識性能の向上にも有効であり,ロボット収穫により適した栽培様式であると考えられた.