老年歯科医学
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調査報告
特別養護老人ホームのインシデントに根本原因分析 (RCA) を用いた効果
浅野 倉栄中島 丘三宅 一徳山本 真樹岡田 春夫遠見 治礒部 博行加藤 喜夫長坂 浩深山 治久
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2011 年 25 巻 4 号 p. 391-396

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抄録
職種間の密接な連携と介護の質の向上を目的として, 施設で発生した口腔に関するインシデントを, 多職種が根本原因分析 (Root Cause Analysis, RCA) を行い, その効果を検証した。
横浜市内の某特別養護老人ホームで起こったインシデント事例の中から, 食事中の誤嚥による気道閉塞症例と利用者の異食および看護師の対応時受傷症例の2つの事例を選び, 関連する施設職員と非常勤歯科医師が分析した。そして, これらの分析内容, 根本原因, 対応策を施設職員へ明示し, 介護業務へ適用した。さらに, インシデントの防止に有用であるかをRCAに参加したメンバーが検討·評価した。
その結果, 施設内で発生したインシデントに対し, 多職種がRCAを行い, 特に口腔に関するインシデントの実態把握, 情報の整理, 分析を行ったので, 異なる視点から問題点を抽出, 共有でき, 広い視野で介護業務に従事することが可能になった。この方法では, 事例の起こった原因を当事者個人の問題だけに留めず, システムやプロセスに焦点をあてて, システムの脆弱性を見出せるので, 多職種が協働する介護施設では有効と考えられた。
以上より, 多職種間でRCAを行い, インシデント発生状況を正確に把握することができた。また, 分析から得た対応策を介護業務へ組み込んだ結果, 有用であることが明らかになった。
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© 2011 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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