老年歯科医学
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25 巻, 4 号
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原著
  • 石川 正夫, 山崎 洋治, 石川 文子, 島田 睦, 田中 良子, 森嶋 清二, 石井 孝典, 高田 康二, 渋谷 耕司, 坂下 玲子, 浜 ...
    原稿種別: 原著
    2011 年 25 巻 4 号 p. 367-374
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/25
    ジャーナル フリー
    高齢者の誤嚥性肺炎は, 口腔内細菌数 (総細菌数) の増加により罹患リスクが高まると考えられている。しかし, 総細菌数を簡便に測定する方法は少ない。今回, 唾液の拭い液として洗口吐出液を用いて, 吐出液中の総菌数の代用指標としてアンモニアを用いた口腔内総細菌数検査の可能性を調査した。
    対象者は姫路市在住の自立高齢者で, 本調査研究への参加同意が書面で得られた146名である。対象者は口腔清潔度として吐出液中アンモニア濃度と総細菌数の検査を受けた。その結果, 吐出液中アンモニア濃度と総細菌数は, 相関係数0.577で関連性を示した(p<0.01)。
    口腔細菌のアンモニア産生能を評価した結果, 23種31株中で21種26株がアンモニアを産生し, Porphyromonas gingivalisが最も高かった。日和見細菌は, 6種9株を評価し, 緑膿菌はじめ肺炎桿菌など5種7株がアンモニアを産生した。
    これらの結果から, 吐出液中アンモニア濃度は, 総細菌数と関連性が認められ, また, アンモニアは口腔細菌をはじめ日和見細菌の多くが産生したことから, 高齢者における口腔内細菌数の簡易評価指標として有用であることが示唆された。
臨床報告
  • 栂安 秀樹, 大久保 真衣, 杉山 哲也, 石田 瞭
    原稿種別: 臨 床 報 告
    2011 年 25 巻 4 号 p. 375-381
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/25
    ジャーナル フリー
    要介護高齢者に対して, 歯科医療従事者の指導の下, 口腔ケア用ジェルを用いた口腔ケアを実施し, その使用効果および食事に関する調査を行った。対象は施設入居者でこれまで口腔ケア用ジェルを使用した経験のない要介護高齢者73名 (男性23名, 女性50名, 平均年齢84.3歳) である。歯科医療従事者が口腔ケアの実施者に対し指導を行い, 頻度と方法の標準化を行った。口腔ケアは, 毎食後と就寝前の1日4回施行した。介入前, 2週間後, 4週間後にその効果を評価した。
    その結果, 歯垢の付着, 炎症, 舌苔, 口臭, 口腔乾燥において介入前に比べ有意に改善がみられた。また, 口腔水分量, カンジダ菌の検出では介入前に比べて4週間後で有意に改善がみられた。聞き取りが可能な対象者に, 食事に関する聞き取り調査を実施したところ, 介入前と比較して食事が楽しみになった, 食事がおいしくなった等の回答があった。
    以上の結果より, 口腔内清掃を中心とした口腔ケアは, 要介護高齢者の口腔内環境改善に有用であった。また口腔ケア用ジェルを併用することにより, 保湿やカンジダ菌減少等に寄与したことが示唆された。
  • -第1報糖尿病の病態と口腔衛生状態-
    清住 沙代, 雨宮 智美, 大屋 朋子, 多比良 祐子, 高柳 奈見, 奥井 沙織, 馬場 里奈, 藤平 弘子, 相川 真澄, 並木 修司, ...
    原稿種別: 臨 床 報 告
    2011 年 25 巻 4 号 p. 382-386
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/25
    ジャーナル フリー
    東京歯科大学市川総合病院 (以下当院) では, 内科, 歯科·口腔外科 (以下当科), 眼科の3科が共同で, 糖尿病患者の状態把握を行う合同調査を開始した。その結果から, 65歳以上の糖尿病患者の口腔衛生状態を調査し, 歯科衛生士がどのように介入すべきか検討を行った。
    対象は, 平成19年11月から平成20年10月までの1年間に, 当院内科を受診し, 当科の受診に了承された糖尿病患者142名のうち, 65歳以上の有歯顎者43名 (男性20名, 女性23名, 平均年齢69.2歳) とした。
    診査内容は性別, 年齢, 糖尿病の罹患期間, 網膜症の有無, 糖尿病の治療方法, HbA1c, 歯槽骨吸収程度, 現在歯数, PCR, BOPの10項目である。網膜症は, 糖尿病合併症のうち, 早期に症状が現れるため, 眼科医と協力し診査内容に含めた。
    今回, これらの診査内容から, 年齢, PCR, BOP, 現在歯数, HbA1cの5項目に着目し検討を行った。
    年齢とPCR, BOP, 現在歯数の検討を行った結果, 年齢が高い程, PCRとBOPの値は高い傾向を示し, 相関性を認めた。また, 現在歯数は70~74歳で最も多く, 75歳以上では減少傾向を示した。HbA1cとPCR, BOP, 現在歯数の検討を行った結果, 相関性は認められなかった。
    年齢と口腔衛生状態には相関性が認められ, 糖尿病の病態と口腔衛生状態に相関性は認められなかったことから, 糖尿病罹患の有無にかかわらず, 高齢者の増齢に伴い歯科衛生士による口腔衛生指導が重要であると考えられた。
  • 兼松 義典
    原稿種別: 臨 床 報 告
    2011 年 25 巻 4 号 p. 387-390
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/25
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 認知症により意思疎通が困難な患者の習慣性顎関節脱臼に対して, 自己血注入療法を施術し, 良好な経過を得たのでその概要を報告する。
    症例は, 84歳, 女性。当法人老人施設に入所しており, 入所時より認知症があり, 認知症高齢者の日常生活自立度はIIIaであった。入所後, 食事や就寝時に顎関節脱臼を起こし, その度主治医による整復を行っていたが, 整復困難となり当科に紹介受診した。初診時は徒手にて整復を行い, チンキャップにて顎外固定を行ったが, その後再脱臼の頻度が増してきたため, 自己血注入療法により再脱臼防止を施術した。術後, 顔面神経麻痺などの症状もなく経過良好であり, 術後7日間, 包帯による顎外固定を行い, 顎外固定除去直後の最大開口域は30 mmであった。その後, 再脱臼も起こさず経過良好である。
調査報告
  • 浅野 倉栄, 中島 丘, 三宅 一徳, 山本 真樹, 岡田 春夫, 遠見 治, 礒部 博行, 加藤 喜夫, 長坂 浩, 深山 治久
    原稿種別: 調 査 報 告
    2011 年 25 巻 4 号 p. 391-396
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/25
    ジャーナル フリー
    職種間の密接な連携と介護の質の向上を目的として, 施設で発生した口腔に関するインシデントを, 多職種が根本原因分析 (Root Cause Analysis, RCA) を行い, その効果を検証した。
    横浜市内の某特別養護老人ホームで起こったインシデント事例の中から, 食事中の誤嚥による気道閉塞症例と利用者の異食および看護師の対応時受傷症例の2つの事例を選び, 関連する施設職員と非常勤歯科医師が分析した。そして, これらの分析内容, 根本原因, 対応策を施設職員へ明示し, 介護業務へ適用した。さらに, インシデントの防止に有用であるかをRCAに参加したメンバーが検討·評価した。
    その結果, 施設内で発生したインシデントに対し, 多職種がRCAを行い, 特に口腔に関するインシデントの実態把握, 情報の整理, 分析を行ったので, 異なる視点から問題点を抽出, 共有でき, 広い視野で介護業務に従事することが可能になった。この方法では, 事例の起こった原因を当事者個人の問題だけに留めず, システムやプロセスに焦点をあてて, システムの脆弱性を見出せるので, 多職種が協働する介護施設では有効と考えられた。
    以上より, 多職種間でRCAを行い, インシデント発生状況を正確に把握することができた。また, 分析から得た対応策を介護業務へ組み込んだ結果, 有用であることが明らかになった。
教育ノート
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