抄録
超高齢社会の到来とともに,義歯の使用者は年々増加し,QOL の観点から,義歯の重要性は増している。有床義歯上に使用される義歯用陶歯は,良好な審美性と高い硬度から広く用いられているが,製品ごとの使用成分と焼成方法によっては,陶材内部に気泡や亀裂が発生し,口腔内装着後に破折の原因となるため,品質管理が重要である。既存の義歯用陶歯内部の評価方法は抽出検査および破壊検査なので得られる情報量が限られている。今回,光干渉断層診断装置(Optical Coherence Tomography;OCT)の非破壊検査,高解像度,同時性などの特徴を用いて,義歯用陶歯の内部構造を評価することを試みた。 国立長寿医療研究センターにて産官共同開発された歯科用 OCT 画像診断機器(IVS-2000, Santec)を用い,4社 13 種の市販義歯用前歯部陶歯を撮影し,得られたOCT 画像上で義歯用陶歯の内部構造とクラックや気泡などの欠陥について非破壊的な評価を行った。義歯用陶歯は使用している珪酸質セラミックの組成が製品種で異なっているが,OCT 画像診断によって光透過性の高いエナメル質部と低い象牙質部(コア部)が確認され,天然歯様に再現していることが判明した。OCT 画像上で義歯用陶歯内部に微細な気泡による空隙も確認できた。歯科用 OCT 画像診断機器を用いることで,試料破壊が必要であった義歯用陶歯の内部評価を非破壊的に行うことが可能であり,JIS の検査事項の内,熱衝撃試験と気泡の確認試験をある程度代替することが可能と考えられた。本研究の結果,歯科用 OCT 画像診断機器を用いることで,リアルタイムに義歯用陶歯の欠陥や内部構造の脆弱な部位を客観的に評価・検出することが可能であると確認された。