抄録
口腔ケア用ジェルを併用した舌清掃の効果を検討することを目的に,2週間の舌清掃前後の舌苔付着量,水分量,舌表面の総嫌気性菌数およびカンジダ菌数の比較と検討を行った。対象は,口腔ケアの介助が必要な高齢者21名(平均年齢88±9歳)とした。被験者をランダムに2群に分けた。コントロール群では舌ブラシによる舌清掃を,ジェル併用群ではヒノキチオール配合口腔ケア用ジェル(リフレケアH,イーエヌ大塚製薬)を舌に塗布し,30秒経過後に舌ブラシによる舌清掃を行った。舌清掃は,口腔ケアごとに行った。評価方法は,舌苔付着程度,舌前方中央部の水分量,舌表面中央部の総嫌気性菌数およびカンジダ菌数の4項目とした。介入期間は2週間とした。各評価項目の比較には,介入前を対象としたDunnett検定を用いた。ケア開始前の各計測項目では,2群間に有意差は認められなかった。コントロール群では,すべての計測項目で介入前後に有意差は認められなかった。一方,ジェル併用群では,介入前後で総嫌気性菌数に有意差は認められなかったものの,舌苔付着程度,水分量およびカンジダ菌数では有意差を認めた。以上の結果より,舌ブラシのみの清掃では十分な舌苔除去効果を得ることはできなかった。しかしながら,ヒノキチオール配合口腔ケア用ジェルと舌ブラシを用いた2週間の舌清掃によって,要介護高齢者の舌苔の付着量が減少することが明らかになった。