抄録
本研究は,在宅要介護高齢者の口腔機能について客観的指標を用いて現状を明らかにするとともに,舌尖口角付け運動能とその他の口腔機能評価との関連性を分析することを目的とした。 兵庫県在住の在宅要介護高齢者 183 名を対象に年齢,性別,要介護度,嚥下機能,舌圧,口唇力,舌尖口角付け運動能について調査した。嚥下機能は反復唾液嚥下テスト (RSST)で評価し,舌圧は JMS 社の舌圧測定器を用い,口唇力はコスモ計器の口唇力測定器リップデカムを用いて測定した。舌尖口角付け運動能については舌尖を左右の口角に繰返し交互に付ける動きを対象者に行ってもらい,5 秒間での実施回数を測定した。舌尖口角付け運動能と嚥下機能,舌圧,口唇圧との関連性は Pearson の相関係数および重回帰分析を用いて解析した。 RSST の平均値は 2.63±1.31,舌圧平均値は 23.11±10.89 kPa,口唇力平均値は 10.64±6.28 N であった。舌尖口角付け運動能の平均値は,6.13±2.78 回であった。舌尖口角付け運動能は RSST,舌圧,口唇力と有意な相関関係を認めた。さらに年齢,性別,要介護度の影響を調整するために重回帰分析を行ったが,相関分析と同様の関連を示した。 これらの結果から,在宅要介護高齢者において舌尖口角付け運動能は嚥下機能や舌圧,口唇力といった口腔機能評価項目と整合性が高いことが明らかとなり,舌尖口角付け運動能が口腔機能の簡便な評価指標として活用でき得る可能性が示唆された。