抄録
超高齢社会の現在,高齢者の介護施設の大幅な増加により,施設近隣の地域密着型急性期病院の役割は非常に大きい。また,急性期病院において,がん治療患者や高齢の肺炎患者などの免疫能が低下した患者への口腔からの感染や口腔内の合併症,さらには誤嚥性肺炎など死に至る全身の合併症の予防のため,歯科介入の重要性が認識されてきている。このような状況の下,本学(福岡歯科大学)総合歯科・高齢者歯科では近隣の歯科診療施設をもたない地域密着型急性期病院と連携し,平成 26 年 5 月より歯科介入を開始した。 今回,介入開始から平成 27 年 3 月までの活動調査を行った。この急性期病院で歯科介入を依頼された患者は 79 人で,65 歳以上の高齢者が 75 人と 95.0%を占め,そのうち寝たきりの患者は 89.4%とほとんどであった。入院に至る主病名は肺炎が最も多く,心不全,骨折と続いた。歯科処置内容は専門的口腔ケアが最も多く,義歯関連処置(調整・修理・新製),歯の固定・鋭縁削合と続いた。さらに,介入患者の転帰としては,他院や介護保険施設への転院が最も多く,死亡,自宅への退院と続いた。死亡原因は重度肺炎によるものが最も多く,そのうち歯科介入のあった患者は歯科介入のない患者に比べて,在院日数が有意に延長していることが判明した。 以上の結果より,歯科介入による口腔機能の維持管理が高齢入院患者の全身状態の維持へ重要な役割を果たしていることが示唆された。