老年歯科医学
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調査報告
摂食嚥下障害患者の高齢者施設と在宅での食形態の違い
市村 和大戸原 玄
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2015 年 30 巻 3 号 p. 332-336

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抄録
介護の現場では,食形態がより咀嚼の必要性が少ないものへ変更することがある。そしてその傾向は在宅よりも高齢者施設において顕著であるように感じる。よって今回,高齢者施設利用者と在宅療養者とでは,提供されている食形態に差があるか調査を行った。 調査は,むせ,痰のからみ,湿性嗄声,咽頭残留感,食塊移送不良などの摂食嚥下障害の疑われる症状がある者,もしくは経管栄養と併用で食事をしている者で,嚥下内視鏡検査による摂食嚥下機能評価を行った高齢者施設利用者 21 名(初回評価時平均年齢 82.6±7.24 歳,最高年齢 92 歳,最低年齢 58 歳),在宅療養者 10 名(初回評価時平均年齢 76.3±9.25 歳,最高年齢 96 歳,最低年齢 65 歳)を対象に行った。そして,摂食・嚥下障害臨床的重症度分類(DSS:Dysphagia Severity Scale)による摂食嚥下機能レベルと嚥下内視鏡検査結果,摂食嚥下機能評価前後で提供された主食および副食の食形態についてまとめ,高齢者施設利用者と在宅療養者の間に差があるかを調査した。 その結果,DSS による摂食嚥下機能レベルと嚥下内視鏡検査結果に関しては,高齢者施設利用者と在宅療養者の間に有意差は認められなかった。しかし食形態に関しては摂食嚥下機能評価前後で,主食,副食ともに有意に高齢者施設利用者のほうが在宅療養者よりも,咀嚼の必要性が低いものを提供されているという結果となった(p<0.001)。 よって今回の調査から,高齢者施設利用者のほうが在宅療養者より食形態を咀嚼の必要性が少ないものへ変更されやすい傾向が示唆された。
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© 2015 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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