老年歯科医学
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原著
要介護高齢者の口腔清掃にかける時間の分析と清掃効果
―高齢者介護施設職員と歯科衛生士ボランティアの比較―
横塚 あゆ子隅田 好美福島 正義
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2016 年 31 巻 1 号 p. 28-38

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抄録

 特別養護老人ホームにおける施設職員および歯科衛生士による口腔清掃の時間分析と清掃効果を比較評価した。東京都内A施設の施設職員5名(介護職員4名,看護師1名)および歯科衛生士6名を口腔清掃実施者とし,入居者18名(年齢68~101歳)を口腔清掃対象者とした。入居者の要介護度は4~5であった。口腔清掃実施者に対して口腔清掃に関する質問紙調査を行い,さらに口腔清掃の様子をビデオ撮影して清掃過程の時間を分析した。口腔清掃対象者に対しては口腔診査を行い,口腔清掃前後の口腔清潔度を多項目唾液検査システム(AL-55,ライオン社製)によるアンモニア量で評価した。統計分析にはt検定を用い(有意水準5%),相関の分析にはPearsonの単相関係数を求めた。質問紙調査では全員が口腔清掃の目的は誤嚥性肺炎の予防と回答した。口腔清掃の自己申告時間は歯科衛生士のほうが長く,口腔清掃の自己評価点は介護職員が低かった。口腔清掃の実測総時間は施設職員が1分33秒~3分59秒,歯科衛生士が3分57秒~15分52秒であった。歯科衛生士は口腔内観察を必ず行っていた。全職種による1回の口腔清掃前後のアンモニア量は有意に低下していたが,職種間で差はなかった。これらの結果より,施設職員より歯科衛生士のほうが口腔清掃にかける時間が長かった。全職種が行う口腔清掃に効果はあったが,職種間に差はなかった。

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© 2016 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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