老年歯科医学
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原著
日本人永久歯歯数の Age-Period-Cohort 分析
―歯科疾患実態調査による―
那須 郁夫中村 隆
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2016 年 31 巻 1 号 p. 39-50

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抄録

 1957年から2011年までの厚生労働省歯科疾患実態調査資料を用いて,日本人の1人当たり永久歯歯数の推移を記述疫学的に観察するとともにAge-Period-Cohortモデルによるコウホート分析を実施した。

 歯数の65歳における等計量線は,1957年から1975年調査までは,男性で13~15本,女性で9~10本であったが,2011年では男女とも20本を超えた。40歳以降の他の年齢階級でも,1987年調査まで3~5本男性のほうが多かった成人歯数の性差は,2011年にはほとんどなくなった。

 コウホート分析から,年齢効果は3効果のうちで最もレンジが大きく,歯数と年齢とは関係が深かった。時代効果は,1975年から1987年調査を底にその後増加傾向にある。この傾向は女性のほうが強い。コウホート効果は,1900年以前に生まれた世代で低く,1930年生まれ以降1975年生まれ世代まで高い水準で推移する。ここでも女性のほうが改善幅が大きかった。

 以上,歯数の減少は年齢効果によるものが大勢を占めるものの,1993年調査以降,全年齢層にわたって調査が進むにつれて歯数の増加改善が観察された。この改善の速度は女性のほうが男性より速かった。このため,2011年時点における成人の歯数は男女の差はなくなり,今後この傾向が続けば,成人男女の歯数は逆転して女性のほうが多くなることが予測される。したがって,ここでわが国が取るべき歯科保健施策は,ポピュレーションアプローチとして,特に男性の歯科保健への関心を高め歯数維持を実践するための施策を打ち出すことであると考えられる。

 加えて高齢者の歯数の増加傾向により,歯科保健・医療の質的のみならず量的変化がもたらされることが予想される。

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© 2016 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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