老年歯科医学
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臨床報告
若年層と比較した高齢者における顎関節脱臼に関する臨床的観察
乾 明成伊藤 良平小山 俊朗田村 好拡長内 俊之佐竹 杏奈野口 貴雄石崎 博小林 恒
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2016 年 31 巻 1 号 p. 51-57

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抄録

 65歳以上の高齢者における顎関節脱臼の特徴を明らかにするために,2004年4月から2014年3月までの過去10年間に当科を受診した顎関節脱臼51例に対して臨床統計的に検討を行った。全症例のうち若年層は26例で,平均年齢は32.0歳であった。高齢者は25例で,平均年齢は78.1歳であった。性別は若年層で男性11例(42.3%),女性15例(57.7%)であり,高齢者で男性5例(20.0%),女性20例(80.0%)であった。来院経路は若年層,高齢者ともに医科からの紹介が最も多く,それぞれ14例(53.8%),17例(68.0%)であった。若年層は急性脱臼が8例(30.8%)であり,発症契機は欠伸が10例(38.5%)を占めた。高齢者は脱臼様式では習慣性脱臼が23例(92.0%),発症契機は不明が17例(68.0%)を占めた。なんらかの全身疾患を有していた者は,若年層で13例(50.0%),高齢者で23例(92.0%)であった。高齢者は精神神経系疾患が13例(52.0%)と最も多く,脳血管障害が7例(28.0%)であった。治療法は若年層では徒手整復後の経過観察が25例(96.2%),高齢者ではチン・キャップによる開口制限が12例(48.0%)で最も多かった。いずれも治療後は良好な経過を得られた。

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© 2016 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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