老年歯科医学
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調査報告
当院における高齢者の顎顔面骨折の統計解析
大村 雄介小松 万純本田 健太郎田川 駿鈴木 大貴齋藤 寛一三條 祐介酒井 克彦野村 武史
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2019 年 34 巻 2 号 p. 143-148

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抄録

 本邦では急速に高齢化が進行しており,さらに高齢者の活動性が向上していることから,高齢者外傷が増加している。今回,われわれは高齢者顎顔面骨折の特徴や傾向を分析することを目的に,当科を受診した高齢者の顎顔面骨折症例について統計解析を行った。対象は,東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科を受診した顎顔面骨折患者320名を65歳以上の高齢者群90名および64歳以下の非高齢者群230名に分類し後方視的に調査した。また,年齢・性別・既往歴・受傷原因・骨折部位・治療法について統計解析を行った。高齢者群は男性53.3%,女性46.7%であり,非高齢者群は男性75.7%,女性24.3%であり,高齢者群では非高齢者群と比べて女性の占める割合が多く(p<0.01),既往歴は循環器疾患,脳血管疾患,糖尿病を有する患者が多かった(p<0.01)。高齢者群における受傷原因は,非高齢者と比較して転倒の割合が有意に多く,スポーツや殴打の割合は少なかった(p<0.01)。骨折部位は,高齢者群では非高齢者群と比較し中顔面単独骨折の割合が有意に多く,下顎骨骨折の割合は少なかった(p<0.01)。治療法は高齢者群では観血的整復固定を行う割合が少なく,顎間固定や保存的治療を行う割合が有意に多かった(p<0.01)。本研究において64歳以下の非高齢者とは異なる高齢者顎顔面骨折の特徴と傾向が明らかとなった。高齢者の顎顔面骨折患者の特徴を把握し咬合機能回復を得るために補綴治療を含めた適切な治療法を選択する必要があると考える。

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© 2019 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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