老年歯科医学
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認定医審査症例レポート
進行性核上性麻痺患者に対する摂食嚥下リハビリテーションを食べる楽しみに焦点をあてて行った1症例
吉田 早織古屋 純一戸原 玄
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2022 年 36 巻 supplement 号 p. 124-127

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抄録

 緒言:進行性核上性麻痺を有する高齢者に対して,摂食嚥下機能の評価と外食を含めた食事支援を行い,食べる楽しみを維持しながら継続的な摂食嚥下リハビリテーションを行った症例を経験したので報告する。

 症例:82歳の女性。進行性核上性麻痺と診断され,約6年後に誤嚥性肺炎にて入院し,主治医から胃瘻を勧められたが経口摂取を継続した。退院後,入居先施設の嘱託医より嚥下機能評価と摂食嚥下リハビリテーションを目的に当科へ依頼があった。口腔内は上下顎義歯が装着されており,近医の訪問歯科により口腔衛生は清潔に維持されていた。口腔機能検査では,舌圧,口腔粘膜湿潤度,舌口唇運動機能,咀嚼能力,咬合力は低下していた。ソフト食を3食経口摂取していたが「形がある物を食べたい」という希望があり,嚥下評価に基づいた段階的摂食訓練により,家族による持ち込みで軟菜一口大レベルの摂食が可能となった。施設と相談のうえ,昼食時に同レベルの食事が提供開始となり,徐々に朝昼2食へ移行した。また,「おいしい外食がしたい」という希望が強く,摂食医療資源マップを活用した外食支援を行うことで外出頻度が向上した。食上げをして半年後,徐々に体幹保持が困難となり頸部固縮を認め,食事は全介助となりむせが増えるようになった。そのため,施設での食事は再度ソフト食へ食下げとなったが,家族の持ち込みと外食によって食べる楽しみを維持している。

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© 2022 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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