2022 年 37 巻 supplement 号 p. 8-13
緒言:歯科訪問診療において,歯科補綴的アプローチにより筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の口腔期障害に対応した後,多職種で協力して食支援を行い長期間経口摂取が維持された症例を報告する。
症例:69歳,男性。義歯の不具合および摂食嚥下の支援を主訴に歯科訪問診療が開始となった。医学的診断名:ALS。現症:摂食嚥下障害なく普通食を摂取。口腔内所見:上下顎無歯顎,全部床義歯(適合不良)。
経過:介入後,四肢などの筋力低下や呼吸不全が急速に進行したため,初診138日目に入院下で気管切開,胃瘻造設され,退院時の食形態はミキサー食に変更となった。歯科訪問診療にて上顎義歯の新製,摂食機能訓練などを行い,初診476日目にVE評価を行ったところ,普通食レベルの経口摂取が可能であった。同時に多職種で患者の情報を共有する体制を整え,妻に対して食事指導などを実施した。
その後,徐々に咽頭機能の低下はみられたが,介入後5年以上経過した現在まで口腔機能は良好に維持されてきた。安全に食事を続けたいとの希望から喉頭気管分離術を施行された。現在も経口摂取が維持され,本人や家族の希望におおむね沿った食事が摂取できている。
考察:ALS患者に対して発症初期より介入し,歯科補綴的アプローチ後多職種が協力して患者にアプローチを行うことにより誤嚥防止のための処置が的確に判断されたことで,長期間経口摂取が維持されたと考える。