老年歯科医学
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義歯装着者への口腔ケアの現状と認識についての調査
権田 悦通伊崎 克弥田中 球生三木 基二木田 順子上野 美奈榎並 祥子
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1996 年 10 巻 3 号 p. 228-236

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抄録

義歯や口腔のケアについての現状や認識度を知る目的で, 本学附属病院に来院した96名の義歯装着者にアンケート調査を行った.
そのうちラポールのとれた患者については, 義歯の清掃の実際をビデオ録画した.また, 義歯清掃時に義歯用ブラシを使用している者10名, 普通の歯ブラシを使用している者10名の上顎総義歯を染色液で染色し, プラークの残存状態を調べた.
1.アンケート調査の結果からは
(1) 義歯についての満足な点は “かめる”, 不満な点は “痛い” が多かった.また, 不満な点には, 義歯が汚れやすく, 手入れが面倒とする者があった.
(2) 義歯取扱いについての指導は, 受けたと回答した者が全体の52%あったが, 実際に指導内容を覚えている者は少なかった.
(3) 義歯の清掃については100%の者が清掃していると回答した.また, 口腔内を清掃している者は局部床義歯で95%, 総義歯で73%であつた.
(4) 義歯および口腔内の清掃用品については, 義歯洗浄剤で89%, 洗口剤で44%, 義歯用ブラシで35%, 義歯用歯みがきで18%の者が知っていると回答した.また, これらを実際に使用しているものはそれぞれ半数を超えていた.
(5) 義歯安定剤については, 知っている者が68%あったが, そのうち, 使っている者は15%であった.
2.ビデオ録画の結果からは, 流水下で義歯を清掃していた者はほとんど観察されなかった.
3.上顎義歯のプラークの残存状態の調査結果からは, 歯ブラシ使用者と義歯用ブラシ使用者ともに全ての部位で粘膜面のプラーク残存程度が研磨面よりも高く, とくに, 切歯乳頭部はほとんど清掃できていなかった.また, 義歯用ブラシ使用者のほうが全般的にプラーク残存程度が少ない傾向がみられた.

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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