老年歯科医学
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要介護高齢者の口腔内実態調査
第1報特別養護老人ホームと老人保健施設との比較
上林 豊彦中野 公桐田 忠昭下岡 尚史杉村 正仁
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キーワード: 高齢者, 口腔衛生, 義歯
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1997 年 11 巻 3 号 p. 203-209

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抄録
当施設は, ある程度独力で自分の身の回りの事が出来る高齢者が入所する老人保健施設 (以下老健施設と略す) と日常生活動作 (ADL; Activities of Daily Living) の低下した高齢者が入所する特別養護老人ホーム (以下特養ホームと略す) とを併設している。
今回, 老健施設の入所者146名と特養ホームの入所者84名とを対象にアンケート調査および口腔内検診を行い, 両群を比較検討したうえ, ADLと口腔内 (義歯) 状況との関連性について検討した。調査項目は入所者の男女別年齢分布, 合併疾患, 口腔内愁訴の有無, 義歯使用状況とその満足度, 義歯汚染度と義歯清掃回数, および口腔清掃度と清掃回数について調査を行い両群を比較した。両群ともに男女別では女性の入所が多く, 年齢分布では80歳代の入所者が最も多かった。合併疾患では特養ホームは脳血管障害や循環器疾患が多く, 日常生活に何らかの制限を受ける入所者が多かったのに対し, 老健施設では前者に比べて比較的軽度のものが多かった。義歯の使用状況では両群ともに全部床義歯の割合が最も多かった。また, 義歯満足度に関しては, 上顎義歯では『満足』と答えた者は老健施設の方が有意に多かったが, 下顎義歯では特養ホームのほうが若干満足度が高い傾向にあったが有意差はなかった。また, 義歯清掃回数では老健施設の方が多い傾向にあり, 特養ホームに比べて義歯の汚染度は低かった。口腔清掃度では老健施設の方が良好であったが清掃回数では差はなかった。
以上のことから, 要介護高齢者においてはADLのレベルが口腔内および義歯の清掃度, あるいは義歯の満足度に少なからず影響を及ぼす可能性が示唆された。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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