老年歯科医学
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特別養護老人ホームにおける高齢者の全身状況, 口腔内状況と口腔清掃自立度について
曽山 善之平田 米里浦崎 裕之中川 秀昭
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2003 年 17 巻 3 号 p. 281-288

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抄録
高齢者における口腔保健はQOLの向上, 誤嚥性肺炎の予防ということからも重要である。高齢者施設入所者の口腔内状況は著しく悪いと考えられ, 特別養護老人ホームを対象に全身状況の調査と口腔内状況を調査し, その実態と口腔清掃自立度との関連性を検討した。
対象は施設入所者72人で, 半数前後が脳血管疾患や痴呆を有していた。BDR指標では自分で自立して歯磨きする者が半数以上を占めた。しかし, 巧緻度では半数以上が指示通り磨けず介助が必要であった。また自発的に磨く者も16人しかおらず, ほとんどが指示を受けたり, 介助が必要であった。磨いている実態に反して口腔衛生状態の低さがうかがわれた。
歯の状況について, 一人平均未処置歯数はやや多く, 特に70歳代後半は約3歯あり, 歯科治療の必要性は高かった。喪失未補綴歯数はどの年齢階級も約10歯前後あり, 十分な補綴などの治療を受けていなかった。一人平均残根歯数はかなり多く, 処置されず放置されたままの口腔内状況であった。
口腔内と全身状況の関連では残根未補綴者ほど痴呆が多く (p<0.05), 痴呆がある人は, 歯磨きの自発性 (p<0.01) や義歯着脱 (p<0.05), うがい (p<0.05) で有意に介助が必要であり, 痴呆に対する十分な口腔ケアが必要であった。食事形態では普通食がとれていれば口腔清掃の自立度は高く (p<0.01), 十分な摂食行動と口腔清掃の自立との関連が示唆された。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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