抄録
重度痴呆患者は, 介護がなければ1日も生活することができないため, 看護師の負担が非常に大きいことが推察される。そこで, 重度痴呆患者のための痴呆専門病棟を備えた単科精神病院に勤務する看護師を対象として, 患者の口腔ケアへの関心などについてアンケート調査した。調査対象者は, 痴呆病棟勤務の経験者78名, 未経験者は61名の計139名であった。アンケート調査の結果, 痴呆病棟勤務の有無に関わらず, 今回の調査対象者の看護師の口腔ケアへの関心は高く, 重度痴呆患者に歯が重要であることが認識されていた。さらに, 介護の具体的場面などを想定した場合では, 口腔内を患者自身で管理できる, または看護師に管理可能であることが好ましいという意見が多く見られた。重度痴呆患者に対する介護のレベルを維持し, 看護師の動機づけや達成感を低下させないためには, 看護師の協力を得ながら, より介護しやすい良好な口腔内状態にする歯科治療を行うように, 歯科医療関係者はより明確に意識していくことが大切と考えられた。