老年歯科医学
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高齢者における咬合再構成の一症例
奥田 啓之兼平 治和前田 照太藤原 到木原 伸彰井上 宏
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キーワード: 咬合挙上
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1994 年 8 巻 2 号 p. 143-147

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抄録

咀嚼系の機能の保全や, また, 審美性の回復を目的として, 咬合高径の低下した患者に咬合を挙上し, 咬合再構成を行う場合がある。このとき, 高齢者では, 生理機能や急激な環境変化に対する適応能力の低下が想定されることから若年者よりも慎重に咬合挙上や咬合再構成を行うべきである。そして, 義歯装着後に新しい咬合高径や義歯にどのように適応していくかを知ることは, 高齢者の補綴処置を考える上で意義深い。
今回, 明らかに咬合高径が低下していると思われる高齢者に咬合挙上を伴う咬合再構成を行った症例について長期的にEMGを記録し, 観察を行った。その結果, 咬合挙上や補綴物に対する適応の過程に関してEMGの時聞的要素と筋活動電位などのパラメータが有効であることを確認し以下の知見を得た。
ガム咀嚼時の時間的要素は平均値, CV値ともにIntervalとCycle Timeで変化したが経時的に術前の値に近づき, 新しい咬合高径や義歯に適応することによって患者固有のリズムに回復していった。Durationに関しては, ほとんど変化が見られず, 咬合挙上や新義歯による影響は見られなかった。
筋活動電位は, 直後には減弱するが新たな咬合高径に対する順応や, 咬合接触点の増加により経時的に増強していった。
これらの適応には, 若年者よりも長い期間を要することが観察された。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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