身体及び精神機能の低下により口腔ケアの自立が困難なケースでは, 介護者による補助が必要となり, その場合, 歯ブラシだけでなく種々の補助器具が使われている。これらの補助器具の中で, 日本で多く使用されている綿棒 (メンティップ
®大小) と, 欧米で広く使用されている柄付きスポンジ (Toothette
®) の口腔粘膜および歯面に対する清掃効果を評価検討した。清掃効果は付着性試料 (人工付着物) を付着させた上顎模型と人の口腔 (口蓋粘膜および上下顎前歯唇側面) を綿棒ならびに柄付きスポンジでぬぐい取り, その除去量を模型口蓋部では目視で, 口腔内では画像処理により評価された。
大小綿棒と柄付きスポンジを用いた模型実験では以下の結果を得た。
1) 小綿棒は清掃効果が著しく低い。
2) 大綿棒では綿棒に付着した人工付着物をふき取りながら15秒以上行なうと清掃効果は高い。
3) 柄付きスポンジではいずれの条件でも清掃結果は高い。
さらに, 大綿棒と柄付きスポンジを用いた口腔内実験では以下の結果を得た。
1) 口蓋部における清掃効果は, いずれの方法でも柄付きスポンジが大綿棒より有意に優れていた。柄付きスポンジを使用した場合の人工付着物除去率は99%以上であった。
2) 歯面における清掃効果は, 水で湿らせ軽く絞った状態で回転しないもののみが両者間で差がない他は, 柄付きスポンジが有意に優れていた。柄付きスポンジを用いた最も良い条件では, 人工付着物除去率は98%であった。大綿棒では最も良い条件で81%であった。
抄録全体を表示