日本消化器がん検診学会雑誌
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新採便緩衝液のヘモグロビン保存安定性の検証―通年での大腸がん検診郵送方式の可能性を求めて―
東塚 伸一篠原 弘珠神野 勉西田 勝彦安田 敏成
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論文ID: 23015

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抄録

兵庫県予防医学協会が受託する神戸市大腸がん検診では, 受診者の60%以上が冬期限定(11月~翌年3月)の郵送方式(以下 郵送法)を利用しており, 受診率向上のためには通年の郵送法が必要と考える。今回, 栄研化学株式会社が新たに開発した採便緩衝液(以下 新緩衝液)を用いて, 夏期の郵送法の可能性を検証した。

便懸濁液を用いた現行緩衝液と新緩衝液の精密性(精密性試験)は同等であった。10種類のヘモグロビン(以下 Hb)陽性便を現行緩衝液と新緩衝液入り採便容器それぞれで採便し, 4°C~43°Cの条件下での最長35日間のHb残存率を評価(保存試験)した結果, 平均85%以上のHb残存率であった期間は, 新緩衝液で4°C, 25°Cで35日間, 35°Cで14日間, 43°Cで3日間であった。夏期に10カ所のポストに投函・郵送した後のHb残存率の評価(郵送試験)では, 最高温度は最大41.3°C, 30°C以上の持続時間は最長10.3時間であり, 新緩衝液のHb残存率は平均95%以上であった。

新緩衝液のHb残存率は, 保存試験において35°C14日間で平均85%以上, 夏期の郵送試験でも平均95%以上であった。新緩衝液は, 過酷な夏期郵送条件でもHbを安定に保つことができ, 通年での郵送法実施は可能と考えられた。

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