抄録
南極、昭和基地南方のスカレビークスハルセンには、コンダライト(ザクロ石‐珪線石片麻岩)とドロマイト質大理石、珪岩が互層して産出する。コンダライト層とドロマイト質大理石層の境界部には、単斜輝石と斜長石(あるいはスカポライト)に富む石灰珪質岩が発達していることがあるが(Yoshida et al., 1976; Matsueda et al., 1983)、第46次南極観測隊による現地調査によって、(_i_)石灰珪質岩が、コンダライト層中に貫入した岩脈状になっていること、(_ii_)コンダライト (GS)が、石灰珪質岩脈との境界部で、ザクロ石-スピネル‐黒雲母片麻岩 (GSB),ザクロ石‐斜方輝石片麻岩 (GO),チャルノッカイト (GH)へと移化することが確認された。
今回、GS-CHの全岩化学組成を測定して、アイソコン解析 (Grant, 1986) をおこなった結果、GSB-GOにおいてSiO2の溶脱が、GOではCaOの付加が顕著であることが確認され、次の可能性が推測された。
GSBは、石灰珪質岩脈(あるいはメルト)からの水に富む流体の流入と、それにともなう部分融解,メルトの分離・移動(SiO2の溶脱)によって形成された。さらに、GOでは、部分融解とメルトの分離・移動に加えて、石灰珪質岩脈(あるいはメルト)との混合(CaOの付加)が起きた。CHは、GSB, GOから分離・移動した部分融解メルトと石灰珪質岩脈の混合によって形成された。