2024 年 42 巻 2 号 p. 121-127
概要:第III相ランダム化比較試験であるLACC trialの結果が報告されて以降,初期子宮頸癌の標準治療は鏡視下手術(MIS)ではなく,開腹手術または放射線療法となった.後方視的検討ではあるがSUCCOR cone studyでは,MIS前に円錐切除をした群で円錐切除をしない群に比べて再発率は65%以下と少なく,開腹手術群と遜色ないことが報告された.診断に円錐切除を要した症例がもともと予後良好である可能性もあるが,MIS前に円錐切除を行うことが腫瘍散布予防につながっている可能性も考えられる.
現在本邦ではJGOG1087通称JACC studyという,腫瘍散布予防や十分な切除マージン確保,子宮マニピュレーター不使用などの条件を満たす腹腔鏡下広汎子宮全摘出術(LRH)の非ランダム化前向き試験が進行中である.JACC Studyで規定された手術方法を守ることが予後を改善するかどうかが注目される.今後は,限定された症例に対してのみLRHが行われていくことになり,腫瘍学的予後をどう担保するのか,また優れた術式をいかに継承するのかが課題となる.
今回,自施設で行った20例のLRHを振り返る.全例で子宮を恥骨側に吊り上げて後方から尿管周囲組織を剥離して血管処理する後方ダイレクトアプローチ(Horie et al. JMIG 2021)を行った.LRH前に円錐切除を行った症例が7例であった(円錐切除群).円錐切除群は年齢が若かった(中央値40歳vs 60歳,p<0.01).また,円錐切除群は病理腫瘍径が大きい傾向(21 mm vs 10 mm,p=0.10),手術時間が長い傾向があった(488分vs 356分,p=0.11).退院時に自己導尿を要する術後神経因性膀胱が円錐切除群に1例見られた.術後再発は円錐切除群の1例で縦隔リンパ節再発と円錐切除をしていない1例で腟断端再発であり,放射線治療と化学療法で寛解した.円錐切除後のLRHでは子宮頸部周囲の血管が発達し手術手技が難しい場合があるが,円錐切除断端陰性で腫瘍が残存していなければ術中腫瘍散布の懸念がないという利点がある.また,FIGO2018のステージングにおいては,肉眼的腫瘍の有無や浸潤の幅に関係なく,腫瘍浸潤の深さでステージが変わるため,術前のステージングと術式決定においても円錐切除の果たす役割が大きくなる.LRHの治療成績の解析においては今後円錐切除の有無にも注目していくべきであると考えられる.