日本婦人科腫瘍学会雑誌
Online ISSN : 2436-8156
Print ISSN : 1347-8559
症例報告
保存的治療後に生児を得た卵巣類内膜境界悪性腫瘍の一例
山﨑 悠紀牛島 倫世荻野 奈緒生水 貫人三輪 重治山川 義寛
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 42 巻 2 号 p. 234-240

詳細
抄録

概要:卵巣類内膜腫瘍は全卵巣腫瘍の約20%とされ,その多くは類内膜癌であり,境界悪性腫瘍はまれである.そのため保存的治療後の妊娠についての報告も極めて少ない.今回,卵巣類内膜境界悪性腫瘍に対して,妊孕性温存治療を行い,生児を得た1例を経験したので報告する.症例は24歳女性で,右卵巣子宮内膜症性嚢胞摘出術後の経過観察中に,左卵巣に充実部分を伴う腫瘤を指摘された.内膜症から発生した明細胞癌なども考慮し,診断のため左付属器摘出術を施行した.術後病理にて卵巣類内膜境界悪性腫瘍と診断した.挙児希望があり根治術は行わず,生殖補助医療が行われた.途中2回子宮内膜ポリープを指摘されたため子宮鏡下に切除した.その後IVF-ETにて妊娠成立し,無事分娩に至った.その後も再発は認めていない.卵巣類内膜境界悪性腫瘍の予後は良いとされるが,元々の内膜症や子宮内膜病変の合併が多く妊娠予後については他の境界悪性腫瘍に劣るとされる.積極的な不妊治療のステップアップや内膜病変の評価が重要と思われた.

著者関連情報
© 2024 日本婦人科腫瘍学会
前の記事
feedback
Top