日本婦人科腫瘍学会雑誌
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シンポジウム4
卵巣明細胞癌マウスモデルに対する抗体薬の治療効果と腫瘍免疫に関する検討
宮川 知保加嶋 洋子村上 幸祐松村 謙臣
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2024 年 42 巻 2 号 p. 86-93

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抄録

概要:卵巣明細胞癌(ovarian clear cell carcinoma;OCCC)はIL-6高産生腫瘍で,腫瘍免疫に影響を与えている可能性がある.さらに臨床試験の結果から免疫チェックポイント阻害薬が奏効する可能性が示唆されている.我々はまず,高IL-6産生腫瘍を形成するOCCCマウスモデルを樹立し,抗体薬を投与して治療効果を検討した.抗IL-6抗体(a-IL-6),抗PD-L1抗体,抗CTLA-4抗体,抗IgG control抗体をそれぞれ単剤もしくは併用して治療を行ったところ,併用療法よりもa-IL-6群で有意に生存期間が延長したが(p=0.0008),併用による相加効果を認めたのは3剤併用のみであった.卵巣腫瘍の免疫細胞をフローサイトメトリーで解析したところ,a-IL-6を投与したマウスでは,腫瘍内に浸潤するリンパ球数の変化を伴わず,CD4陽性T細胞の機能低下を認め,抗体薬併用による相加効果が得られない原因の一つである可能性が示唆された.さらに,ヒト卵巣癌コホートにおける遺伝子発現プロファイルから,OCCCは高異型度漿液性癌と比較してCD4陽性T細胞のうちRORgt陽性T細胞のマスター転写因子であるRORCが高発現しており,OCCC signatureと相関していた.マウスモデルにRORgt陽性T細胞から産生されるサイトカインであるIL-17を投与すると,CD4/8陽性T細胞数がそれぞれ有意な増加を認めた.OCCCに対して,a-IL-6は一定の抗腫瘍効果を認めるが腫瘍免疫を抑制した.一方でIL-17はT細胞数を増加させるため,これらとICIの併用で相乗効果が期待できる可能性がある.

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